見積もりを出したあとに「もう少し下がりませんか」と言われる。
フリーランスで受託をしていれば、いずれ必ず来る場面です。
先に書いておくと、私は理不尽な値切りに遭ったことがほとんどありません。
値下げの相談は受けたことがありますが、どれも納得できる形でした。
この記事では、実際にどういう形で来たのか、そのときどう答えたのかを書きます。
「強気で断る方法」ではありません。
むしろ、下げてもいい場合と、下げてはいけない場合の線引きの話です。
ふだんはフリーランスでWeb制作をしています(運営者情報)。
来たのは「値切り」ではなく「仕様変更」だった
私が経験した値下げの相談は、ほぼ同じ形をしていました。
「この機能を削るので、そのぶん金額を下げてもらえますか」
これは値切りではありません。
作るものが減っているので、値段が下がるのは当然です。
この形で来たものには、私はすべて合意しています。
ここを混同すると、話がおかしくなります。
値下げの相談には、性質のまったく違う2種類があります。
| 言われ方 | 実際に起きていること | どう答えるか |
|---|---|---|
| この機能を削るので下げてほしい | 仕様変更。作業量が減っている | 受けていい。削る範囲を確定させる |
| 内容はそのままで下げてほしい | 単価の切り下げ。作業量は変わらない | 受けるなら、何を諦めるのかを決める |
上の行なら、話は簡単です。
困るのは下の行のほうで、これは同じ仕事を安くやることになります。
相手に悪気があるとは限りません。
予算が決まっていて、そこに収めたいだけ、ということもあります。
ただ、こちら側で起きることは時給が下がるという一点です。
そこは分けて考えたほうがいいと思っています。
答えるべきは金額ではなく「何を削るか」
値下げを相談されたときに、いきなり金額で返さないほうがいいと考えています。
「では5万円下げます」と答えると、作るものは変わらないまま金額だけが減ります。
しかもこの状態だと、あとから「ここもお願いします」という話が来たときに断りにくい。
減った金額の中で増えた作業をすることになります。
だから最初に確定させるのは、何を作らないことにするのかのほうです。
順番としてはこうなります。
- 予算がいくらなのかを聞く。金額の上限が決まっているのかを確認する
- その予算に収めるために、どれを外すかを一緒に決める
- 外したものを、見積書と依頼内容の両方に明記する
- そのうえで金額を出し直す
3つめが特に大事です。
口頭やチャットで「今回は外しましょう」と決めても、書き残していないと後半で忘れられます。
悪意ではなく、単純に記憶から消えます。
減額の理由を文字にしておくだけで、後の揉め事がかなり減ります。
この形にすると、値下げの相談が対立ではなくなります。
相手は予算に収めたい、こちらは作業量に見合う金額にしたい。
どちらも「量を減らす」で解決するので、そもそも交渉ではなく設計の話になります。
私の下限は「相手が出している最低額」
自分の下限をどこに置くかという話も書いておきます。
私は基本的に、クライアントが提示している金額の下限に合わせています。
募集に「10万円〜15万円」と書かれていれば、10万円を基準に考えます。
これだけ読むと安く受けすぎに見えるかもしれません。
ただ、その前に選別が入っています。
あまりに安い案件には、そもそも応募していません。
つまり私の値下げ対策は、交渉の場ではなくその手前の応募の段階にあります。
テーブルに着く前に相手を選んでおけば、着いたあとで揉めることは減ります。
これは応募という手段だからできることでもあります。
募集ページには最初から予算が書いてあるので、合わない相手を避けられます。
値下げ交渉が苦手だと感じている人ほど、断る力を鍛えるより、応募先を絞るほうが効くと思います。
下げてもいい場面は、実際にある
ここまで「安易に下げない」という話をしてきましたが、下げていい場面もあります。
私自身、明らかに安いと分かっていて受けたことがあります。
2026年の2月、決済機能を外したECサイトのような構成のサイトを、2万円で受けました。
割に合っていません。
それでも受けたのは、そのときとにかく契約が1件欲しかったからです。
実績も評価もゼロの状態で、まず通したかった。
この判断を今も正解だとは思っていません。
ただ、間違いだったとも言い切れません。
金額としては損ですが、あの1件がなければ次に進めなかったのも確かです。
つまり、値下げに応じるかどうかはそのお金以外に何を受け取るのかで決まります。
- 実績として出せる。公開の許可がもらえる
- 評価が付く。プラットフォーム上の実績が積める
- 継続に繋がる見込みがある
- 単純に、いま手が空いている
これらが1つも無いのに金額だけ下げるなら、それはただの減収です。
逆に、どれかが確保できるなら投資として説明がつきます。
危ないのは、安く受けること自体ではなく、それが常態になることです。
1件目なら投資と言えますが、10件目も同じ金額なら、それは投資ではなく単価が固定されただけです。
私はまだこの単価帯から抜けられていないので、そのあたりの実感はクラウドソーシングの単価が安いと感じたときに見た数字に書きました。
5件に1件は、金額が書かれていない
ただし、その選別ができない案件もあります。
私が応募した案件の募集内容を集計したところ、金額が読み取れたのは223件、一方で「ワーカーと相談する」など金額が示されていない募集が51件ありました。
おおよそ5件に1件です。
この場合、最初の金額を出すのはこちらです。
相手の上限が見えないまま数字を書くことになります。
ここが実質的に一番シビアな場面だと思っています。
値下げを求められる前に、自分で下げた金額を出してしまうことが起きるからです。
交渉が始まってすらいないのに、単価が決まります。
対処としては、金額を出す前に予算感を聞くのが確実です。
「ご予算の目安はありますか」と一度確認するだけで、当てずっぽうの数字を出さずに済みます。
聞きにくい気がしますが、相手からすれば普通の質問です。
断られる理由は、金額だけではない
最後に、値下げに応じなかった結果として失注することを恐れすぎなくていい、という話を書いておきます。
私が断られたケースを振り返ると、金額だけが理由ということはあまりありませんでした。
納期が合わないことも同じくらいあります。
こちらが空いている時期と、相手が出したい時期が噛み合わない、というだけの話です。
そう考えると、値下げに応じても取れなかった可能性は普通にあります。
金額を下げることは、成約を保証しません。
それに、そもそも1件の募集には中央値で61人が並んでいます(Web制作フリーランスが案件を取れない理由に集計を出しました)。
この状況で値下げを競っても、下には下がいます。
価格で勝ち続けるのは構造的に無理です。
だからこそ、削る量で調整するという答え方に落ち着きました。
値段を下げるのではなく、値段に合わせて作るものを決める。
これなら何度繰り返しても自分が削れません。
そもそも並ばずに済む入り口を増やす話は、営業しないで案件を取る方法に書きました。
値下げ圧力から離れる方法としては、そちらのほうが本筋かもしれません。
