フリーランスになると、働き方が大きく2つに分かれます。
エージェント経由で1社に入って稼働するか、案件ごとに受託して納品するか。
前者は常駐案件、後者は受託案件と呼ばれます。
私は両方やりました。
エージェント経由で約1年参画したあと、いまは受託だけで動いています。
その経験から言うと、この2つの違いは収入が安定するかどうかではなく、時間を差し出すかどうかでした。
ふだんはフリーランスでWeb制作をしています(運営者情報)。
両方を経験したうえで、いまなぜ受託を選んでいるのかを書きます。
私が経験した「常駐」はフルリモートだった
まず言葉の話をします。
常駐という呼び方から、客先のオフィスに毎日通う姿を想像する人が多いと思います。
私が入った案件はフルリモートでした。
一度も出社していません。
それでもこの働き方は常駐案件と呼ばれます。
つまり常駐かどうかは場所の話ではありません。
決まった時間、1社の業務に稼働を割り当てる契約かどうか、という区別です。
ここを取り違えると選択を間違えます。
「リモートなら常駐でも自由が利くだろう」と考えて入ると、実際に手に入るのは通勤時間がないことだけです。
日中が埋まる構造自体は変わりません。
逆に言えば、受託と常駐を分けているのは売っているものの違いです。
常駐は稼働時間を売り、受託は成果物を売ります。
ここから先の差は、ほぼ全部この一点から出てきます。
やってみて「会社員とほぼ変わらない」と思った
1年やってみて、正直な感想はこれでした。
会社員時代と、体感がほとんど変わりません。
朝になったら参画先の業務が始まり、日中はそこにいて、決まった時間まで動く。
使うツールも、打ち合わせの回数も、相談する相手も、会社員のときとそう違いませんでした。
違いとして感じたのは2つだけです。
報酬の決まり方と、責任の置かれ方が少し違う。
それくらいでした。
この「ほぼ変わらない」は、良い意味でも悪い意味でも受け取れます。
会社を辞めた解放感を期待していると拍子抜けしますし、逆に独立したてで生活を安定させたいなら、これ以上ないくらい安全な選択でもあります。
会社員の働き方をそのまま持ち込めるので、慣れる時間がいりません。
フリーランスになったのに会社員と同じでは意味がない、という感じ方もあると思います。
ただ、それは自由が目的の人の話です。
まず収入を作りたい時期に、慣れた働き方で入れるのは弱点ではありません。
安定する代わりに、日中がまるごと消える
常駐の一番のメリットは、収入が読めることです。
毎月いくら入るかが決まっているので、生活の計画が立ちます。
案件を探し続けなくていいのも大きい。
その代わり、日中がまるごと消えます。
私は参画中も自分の仕事を進めたかったので、朝早く起きて自分の作業をやり、日中は参画先の業務に入るという生活をしていました。
並行はできます。
ただし、自分の仕事は必ず朝か夜に押し出されます。
これが効いてくるのは、自分の受託案件でクライアントとやりとりが必要になったときです。
相手が動いているのは日中で、こちらは参画先に入っている。
返信が半日遅れるのが常態になります。
営業をかけようにも、その時間が取れません。
作業自体は朝に寄せれば進みます。
動かないのは、相手がいる仕事のほうです。
見積もりの相談、仕様の確認、修正の擦り合わせ——どれも先方の営業時間に発生するので、こちらの朝には持ち込めません。
結果として、自分の受託は「新しく取りにいく」より「すでにある案件を静かに進める」形に寄っていきました。
これは体力の問題ではありませんでした。
早起きは続けられます。
時間帯が噛み合わないほうが効きます。
つまり常駐は、収入を安定させる代わりに自分の商売を育てる時間を奪います。
ここが受託との一番大きな差でした。
受託は読めない。代わりに時間割を自分で決められる
受託は逆です。
来月いくら入るかは分かりません。
私の場合、応募して案件を取る動き方をしていますが、その通り方は決して良くありません。
4か月半で871件提案して、9割は返事すら来ませんでした(Web制作フリーランスが案件を取れない理由に実数を出しています)。
この不確実さを毎月抱えることになります。
それでも受託を選んでいるのは、時間の使い方を自分で決められるからです。
集中したい日は朝から夜まで実装に使えますし、営業に充てたい週はそうできます。
誰かの稼働時間に自分を合わせる必要がありません。
私にとってはここが決定的でした。
報酬が安定しても、時間が縛られるのがきつい。
受託で生活が回るなら、そちらでいたいと思っています。
常駐は、終わり方を自分で決められない
私の参画は契約終了で終わりました。
自分から抜けたわけではありません。
これは常駐の構造上そうなります。
稼働を1社に預けている以上、その1社の都合で終わります。
プロジェクトが完了すれば終わりますし、予算が変われば終わります。
こちらがどれだけ続けたくても、判断するのは相手です。
受託にも失注はあります。
ただ、複数の相手と同時に動いているので、1件終わっても全部が消えるわけではありません。
並べるとこういう違いです。
- 常駐:大きい取引先が1つある状態。安定しているが、失うときは一度に全部失う
- 受託:小さい取引先が複数ある状態。毎月ぶれるが、一度にゼロにはなりにくい
厄介なのは、この2つが組み合わさっていることです。
常駐中は日中が埋まっているので、次の参画先を探す時間も、受託の営業をかける時間も取れません。
つまり、終わってから探し始めることになります。
収入が安定しているように見えて、切れ目のリスクだけは受託より大きい。
ここは入る前に知っておいたほうがいいところです。
参画が決まった時点で、終わったあとの数か月をどうするかまで一度考えておくと安全だと思います。
どちらがいいかは「いま何が足りないか」で決まる
両方やったうえでの結論はこれです。
優劣ではなく、いま自分に足りていないものがどちらかで決まります。
| いま足りないもの | 向いている働き方 | 理由 |
|---|---|---|
| 収入 | 常駐 | 翌月の金額が読める。案件を探す時間がいらない |
| 時間 | 受託 | 時間割を自分で決められる。営業や自分の商売に充てられる |
| 実務経験 | 常駐 | 1社の中に入るので、長い期間の運用まで見られる |
| 取引先 | 受託 | 案件ごとに相手が増える。リピートが資産になる |
私は、生活が苦しくなったらまた常駐に戻る前提でいます。
避けるべき状態として捉えていません。
1年やれば立て直せることは経験として分かっているので、そこは選択肢として残してあります。
逆に、常駐だけを続けるつもりもありません。
稼働を売っている間は、自分の取引先が増えないからです。
参画が終わったときに手元に残るのは、実績と経験であって、次の仕事をくれる相手ではありません。
常駐に入るときに知っておくこと
エージェント経由で常駐に入る場合、実務として押さえておくといいことが2つあります。
ひとつは、入口は職務経歴書(スキルシート)だということです。
私は3社に登録しましたが、見られたのはほぼこれでした。
面談もありますが、その前に書類で絞られます。
何を書いてあるかで案件の紹介が変わるので、ここに時間をかける価値があります。
もうひとつは、自分がいくら抜かれているかは基本的に分からないということです。
私は1年参画しましたが、エージェントの取り分がいくらだったか、いまも知りません。
これは私が特殊なのではなく、そういう構造になっています。
この話はフリーランスエージェントの手数料相場で別に書きます。
常駐と受託は、どちらかに決めて一生続けるものではありません。
私は1年入って、抜けて、いまは受託にいます。
足りないものが変わったら、また戻るかもしれません。
選び直せるというのが、この働き方の一番いいところだと思っています。
