見積もりの金額は、税込と税抜のどちらで書くのか。総額表示の義務がかかる相手と、書き方で揉めないために

同じ長さの帯2本のうち下の帯にだけ10%の部分が足された線図と、見積という見出し

見積もりや提案文に金額を書くとき、「30万円」と書くのか、「30万円(税抜)」「33万円(税込)」と書くのか。
税込で書くと高く見える、税抜で書くと後から「消費税は別だったの?」と言われそう。
法律で決まった書き方があるのか、と迷ったことがあると思います。

先に結論を書きます。

  • 見積書・契約書・請求書は、税込と税抜のどちらで書いてもかまいません。税込の価格を表示する義務(総額表示)は、不特定かつ多数の人に向けて前もって示す値札や広告などが対象で、見積書や事業者どうしの取引は対象外です(国税庁・財務省)
  • ただし、自分のサイトの料金ページで一般の消費者向けに「見積り例」を載せているなら、総額表示の対象になりえます。
  • いちばん大事なのは、税込か税抜かを必ず書くことです。公正取引委員会・厚生労働省の「考え方」は、発注者が報酬の額を示すときの決まりとして、消費税込みの額を示すならその旨を明確に書く必要がある、としています

ふだんはフリーランスでWeb制作をしています(運営者情報)。
税理士ではないので、ここに書くのは条文と国税庁・財務省などの資料、クラウドソーシングの規約、自分の記録で確かめたことだけです。
個別の判断は、税務署か税理士に確認してください。

目次

総額表示の義務がかかるのは、消費者向けの値札や広告

税込の価格で表示しなければならない決まり(総額表示)は、消費税法 第63条にあります。

事業者(第九条第一項本文の規定により消費税を納める義務が免除される事業者を除く。)は、不特定かつ多数の者に課税資産の譲渡等(第七条第一項、第八条第一項その他の法律又は条約の規定により消費税が免除されるものを除く。
以下この条において同じ。)を行う場合(専ら他の事業者に課税資産の譲渡等を行う場合を除く。)において、あらかじめ課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の価格を表示するときは、当該資産又は役務に係る消費税額及び地方消費税額の合計額に相当する額を含めた価格を表示しなければならない。

消費税法 第63条

条文から読めるのは3つです。
義務を負うのは消費税を納める事業者で、免税事業者は除かれています。
対象は「不特定かつ多数の者」に向けて「あらかじめ」価格を示す場合です。
そして、もっぱら他の事業者に売る場合は除かれています。

見積書については、国税庁のタックスアンサー No.6902「総額表示」の義務付け(Q&A)が、「総額表示義務のない場合」として、はっきり答えています。

総額表示の義務付けは、不特定かつ多数の者に対する値札や店内掲示、チラシあるいは商品カタログにおいて、「あらかじめ」価格を表示する場合を対象としていますから、見積書、契約書、請求書等については、総額表示義務の対象とはなりません。

国税庁 タックスアンサー No.6902「総額表示」の義務付け(Q&A)「総額表示義務のない場合」

財務省の「総額表示に関する主な質問」も、Q1で見積書・契約書・請求書等は対象にならないとし、Q3で「一般的な事業者間取引における価格表示は、総額表示義務の対象にはなりません」としています。
Web制作の見積書は、税込でも税抜でも、法律上はどちらでもかまいません。

料金ページの「見積り例」は対象になりうる

ただし、財務省は同じ資料のQ1(見積書や請求書等は対象か)で、見積書は対象外としたうえで、こう注意しています。

ただし、広告やホームページなどにおいて、あらかじめ“見積り例”などを示している場合がありますが、これは、不特定かつ多数の者にあらかじめ価格を表示する場合に該当しますのでご注意ください。

財務省「総額表示に関する主な質問」

自分のサイトに「ホームページ制作 ○○円〜」のような料金ページを載せている場合は、こちらにあたる可能性があります。
事業者向けのサービスでも、「一般消費者向けに広告等によって販売促進活動を行っているとすれば、総額表示義務の対象となります」とも書かれています。
個人のお客さまも想定した料金ページを出していて、自分が課税事業者なら、税込の価格を表示しておくのが安全と考えています。
Web制作者の料金ページを名指しした資料は見つかりませんでした。

どちらで書くかより、どちらかを書くことが大事

見積書に義務が無いといっても、税込か税抜かを書かないと、あとで揉めるもとになります。
フリーランス法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)第3条は、発注者に報酬の額などを示すよう求めています。
公正取引委員会・厚生労働省の「考え方」は、報酬には消費税も含まれるとしたうえで、こう書いています。

「報酬の額」の明示に当たっては、本体価格だけでなく、消費税・地方消費税の額も明示することが望ましい。
また、いわゆる内税方式として消費税・地方消費税込みの「報酬の額」を明示する場合には、その旨を明確に記載する必要がある。

公正取引委員会・厚生労働省「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律の考え方」

これは発注者が条件を示すときの話ですが、受ける側が見積もりを出すときにも、同じ考え方で書いておけば行き違いを防げると考えています。

ランサーズのよくある質問(「上手に金額交渉するコツを教えてください」)も、金額を提示・交渉するときのコツとして「契約金額を基準に」「税抜/税込を明確に」を挙げ、「契約金額 50,000円」のように税抜か税込か分からない書き方を、よくない例にしています。

免税事業者の場合は、財務省などのQ&Aが、発注者が「税抜」や「税別」で価格を決めるときは「消費税相当額の支払いの有無について、互いに認識の齟齬がないよう、ご留意ください」としています。
国税庁のインボイスQ&A(問26-2)は、免税事業者が請求書などに消費税相当額を書いても、適格請求書と誤認されるおそれのあるものでなければ基本的に罰則の対象にはならないとし、仕入れで負担した消費税相当額を上乗せして請求することは「適正な転嫁として、何ら問題はありません」としています。
ただし、インボイス(適格請求書)と誤認されるおそれのある書類を出すことは禁止されています(同じ問)。
インボイスの登録そのものの話はインボイス未登録のフリーランスは、仕事を受けにくくなるのかにまとめました。

クラウドソーシングでは、入力する金額が税抜のことが多い

クラウドソーシングでは、自分で書く提案文とは別に、画面に金額を入力します。
この入力の金額が税込か税抜かは、サービスによって違います。

  • クラウドワークス:ヘルプの計算例は「契約金額 10,000円(税抜)のお仕事の場合」と、契約金額を税抜で示しています。お知らせでは、ワーカーの登録の有無に関わらず「これまでどおりクライアントさまに消費税請求を行います」としています
  • ランサーズ:2023年3月のお知らせで、コンペ以外の方式では「税抜」表示が標準になっていた、として、コンペも税抜表示にそろえています。インボイス制度の対応状況に関わらず、クライアントに消費税を請求する、としています
  • ココナラ:ヘルプは、出品者が課税事業者として登録している場合、サービスページや提案の金額に「(税抜)」と表記され、外税として別途加算される、としています

クラウドワークスでは、手数料を引いた受け取り額(税抜)を入力して、そこから契約金額を計算する方法もあります。
2020年5月のお知らせは、この「ワーカー受け取り金額(税抜)」は発注者側では確認できない、としています。
提案文には、発注者に見える契約金額で書くのがよいと考えています。

画面に入力した金額と、提案文に書いた金額の税込・税抜がずれていると、発注者が混乱します。
提案文には「条件の欄には税抜○円で入力しています」のように、入力した金額との関係を書いておくと、取り違えにくいと考えています。

インボイスでは、消費税の端数処理は1枚につき税率ごとに1回

課税事業者で、インボイス(適格請求書)を出す場合は、税抜か税込の合計額と、税率ごとの消費税額を書く必要があります(消費税法 第57条の4第1項)。
どちらを基準に計算してもかまいませんが(施行令 第70条の10)、端数の処理には決まりがあります。

適格請求書の記載事項である消費税額等に1円未満の端数が生じる場合は、一の適格請求書につき、税率ごとに1回の端数処理を行う必要があります(消令70の10、基通1-8-15)。

国税庁 インボイスQ&A 問57

切り上げ、切り捨て、四捨五入のどれにするかは任意ですが、品目ごとに消費税を計算して端数を処理し、それを合計する書き方は認められない、とされています。
見積もりの段階で品目ごとに税込の金額を出していると、請求書の合計とずれることがあるので、見積もりも税抜の合計に消費税を1回かける形にしておくと、請求書と合わせやすいと考えています。

私の記録では、提案文の6割は税の表記が無かった

自分の記録を数えました(2026年9月29日時点。
自分のブログなど自社の案件は除く)。
提案文1,302件のうち、金額を書いていたのは497件でした。
その税の表記は次のとおりです。

金額を書いた提案文497件の税の表記件数
表記なし302
税抜・税別だけ140
税込だけ47
税込と税抜の両方8
2026年9月29日時点。1件のファイルに「税込」「税抜」「税別」などの語があるかで分けた

金額を書いた提案文のおよそ6割に、税込か税抜かの表記がありませんでした。
一方、見積もりのファイル136件では、税抜・税別だけが112件で、こちらはほぼ書いていました。
ランサーズの見積もりには「金額はすべて税別です」という決まった一文を入れていたためです。

取り込んだ募集内容1,347件では、発注者が本文に税込と書いていたものが104件、税抜・税別が39件、両方が8件で、1,196件は表記がありませんでした(クラウドワークスの画面の決まった文言や、取り込んだときの項目欄などは除いて数えています)。

取引先に出した金額の税込・税抜の扱いを、あとから直した記録は3件ありました。
1件は海外の発注者で、足した消費税が不要だったもの(輸出免税)。
残りの2件は、こちらの書き方が原因でした。

  • 提案文と最初のメッセージで「税込」と書いた金額を、打ち合わせで「税抜で、税込ならこの額」と口頭で直した。書面では直さず、税抜で契約した
  • 保守の月額を税の表記なしで伝え、成約したあとで税別と確定した

記録の上では、どちらも税抜・税別の金額で決まっています。
それでも、最初から書いておけば、あとから直す必要はありませんでした。
発注者から「税込ですか」と聞かれた記録は、探した範囲では0件でした。
聞かれないまま、それぞれが別の前提で考えている可能性がある、ということだと考えています。

見積もりを書くときに確かめたい4つ

  • 税込か税抜かを必ず書く:「300,000円(税抜)/330,000円(税込)」のように両方書くと、取り違えにくい
  • 画面の入力と合わせる:クラウドソーシングでは、条件の欄に入力した金額が税込か税抜かを、提案文にも書く
  • 料金ページは税込で:課税事業者で、個人のお客さまも見る料金ページや見積り例を出しているなら、総額表示の対象になりうる
  • 端数は1回で:インボイスを出すなら、消費税は税抜(または税込)の合計から1回だけ計算する

まとめ

  • 見積書・契約書・請求書は、総額表示の義務の対象外。税込でも税抜でもかまわない
  • 総額表示の義務は、課税事業者が不特定かつ多数に向けて前もって示す値札や広告が対象。料金ページの見積り例は対象になりうる
  • いちばん大事なのは、税込か税抜かを明記すること。発注者と別の前提で考えていると、あとで揉める
  • クラウドソーシングでは、画面に入力する金額が税抜のことが多い。提案文との関係も書いておく
  • インボイスの消費税の端数処理は、1枚につき税率ごとに1回。免税事業者が消費税相当額を書くこと自体は、インボイスと誤認されるおそれがなければ基本的に罰則の対象ではない

源泉徴収の対象になる金額の話はWeb制作の報酬は源泉徴収されるのかに、海外の発注者への見積もりと消費税は海外のクライアントから受けた仕事に、消費税はかかるのかにまとめています。

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この記事を書いた人

宮城県東松島市でひとりでWeb制作をやっています。Web業界10年、会社員時代に50を超えるプロジェクトを担当したのち独立。実際に使った道具と、迷って決めたことを書いています。

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