受けた仕事を、ほかの人に外注してもいいのか。請負なら原則は自由、ただし責任は自分に残る

1人から破線が2人へ分かれる線図と、外注という見出し

サイト制作を1件受けた。
コーディングは自分でやるとして、デザインや写真の加工は、知り合いのフリーランスに手伝ってもらいたい。
あるいは、忙しい時期に受けた案件の一部を、誰かに回したい。
こういうとき、受けた仕事をほかの人に外注してよいのか、発注者に言う必要があるのか、何かあったら誰の責任になるのか。
受託で仕事をしていると、一度は考える場面だと思います。

先に結論を書きます。

  • 請負の契約なら、外注は法律の上では本来自由です。準委任(保守や運用など)なら、発注者の許諾かやむを得ない事由が要ります(民法 第644条の2・第656条)。どちらでも、契約で外注を禁じていれば、それが優先します
  • 外注しても、発注者に対する責任は自分に残ります。外注先のミスで納品が遅れたり不具合が出たりしたら、発注者に対しては受けた自分が責任を負う、というのが民法の一般原則です
  • フリーランスに外注すると、自分が発注者として条件を示す義務を負います(フリーランス法 第3条)。自分に従業員がいなくても、規模に関係なくかかります

ふだんはフリーランスでWeb制作をしています(運営者情報)。
弁護士ではないので、ここに書くのは条文と公的資料の該当箇所、自分の記録で確かめたことだけです。
個別の契約の解釈は、専門家に相談してください。

目次

請負なら外注は本来自由、準委任なら許諾が要る

外注してよいかは、まず契約の型で分かれます。
Webサイトの制作のように「完成させる」ことを約束する契約は請負、保守や運用のように「作業をする」ことを約束する契約は準委任にあたることが多いと考えています。

民法の請負の節(第632条〜第642条)には、請負人が仕事をほかの人にさせることを制限する条文がありません。
IPA(情報処理推進機構)のシステム開発のモデル契約書の解説は、はっきりこう書いています。

請負の場合、ベンダは仕事の完成、すなわちソフトウェアの完成について責任を負っており、その観点からはベンダが再委託先の選定について責任を負うとともに広汎な裁量を有している(請負契約においては、受注した仕事を受注者が第三者に再委託することは本来自由である。)。

IPA「情報システム・モデル取引・契約書〈第二版〉」第7条の解説

一方、委任には、ほかの人に任せることを制限する条文があります。

受任者は、委任者の許諾を得たとき、又はやむを得ない事由があるときでなければ、復受任者を選任することができない。

民法 第644条の2第1項

この決まりは、準委任にも当てはめられます(第656条)。
保守や運用の契約で作業を外注するなら、発注者の許諾をもらっておくのが原則です。

ただし、どちらの型でも、契約書や募集で外注を禁じていれば、それが優先します。
経済産業省の「秘密情報の保護ハンドブック」は、業務委託契約書の参考例として、次のような条文を載せています。

第○条(再委託)1.乙は、甲の事前の書面による承諾を得ずに、本業務の全部又は一部を第三者へ再委託してはならない。

経済産業省「秘密情報の保護ハンドブック」業務委託契約書の例

「甲」が発注者、「乙」が受注者です。
受け取った契約書にこういう条文があれば、請負でも、発注者の承諾なしに外注することはできません。

外注先のミスの責任は、受けた自分に残る

外注しても、発注者との契約は自分と発注者のあいだのものです。
外注先の作業が遅れたり、不具合があったりしたら、発注者に対しては自分が責任を負います。

民法 第415条の条文には「履行補助者」という言葉は出てきませんが、法務省の改正の説明資料は、債務者(受けた側)に帰責事由があるかの例として、次を挙げています。

③引渡しのための運送中に運送人の過失による事故で壊れてしまった → 通常は帰責事由あり

法務省「民法(債権関係)改正の説明資料」

自分が頼んだ第三者(運送人)の過失でも、通常は自分の責任になる、ということです。
改正の検討の途中の法務省の資料も、履行を補助する第三者の行為で契約が守られなかった場合は、受けた側が責任を負うという一般原則に従う、と説明しています。

IPAのモデル契約書も、再委託した場合の責任をこう書いています。

5. 乙は、再委託先の履行について甲に帰責事由がある場合を除き、自ら業務を遂行した場合と同様の責任を負うものとする。
但し、甲の指定した再委託先の履行については、乙に故意又は重過失がある場合を除き、責任を負わない。

IPA「情報システム・モデル取引・契約書〈第二版〉」第7条第5項

発注者が指定した外注先なら責任が軽くなる、というただし書もあります。
ただこれはモデル契約の定めで、法律で決まっているわけではありません。
自分で選んだ外注先の仕事は、自分の仕事として扱われると考えておくのが安全です。

なお、IPAのモデル契約は、受けた仕事の全部を回すこと(丸投げ)は認めない、という立場をとっています。

クラウドソーシングの規約は、外注そのものは禁じていない

クラウドワークス・ランサーズ・ココナラの利用規約を読みました(ココナラは、出品者が同意する加盟店規約と「ルールとマナー」のページも)。
3社とも、受けた仕事をほかの人に外注することを禁じる条項は見当たりませんでした。
禁じているのは、アカウントやIDを他人に使わせることと、会員としての契約上の地位を他人に譲ることです。

2. 会員は、登録したID及びパスワードについて、第三者による利用や第三者への貸与・譲渡等の行為を行ってはならないものとします。

クラウドワークス利用規約 第20条第2項

ランサーズ(第30条)とココナラ(第74条第2項)にも、同じようにログイン情報を第三者に使わせることを禁じる定めがあります。
外注先に自分のアカウントでやり取りをさせるのは、この規約に触れます。

ランサーズの規約は、秘密保持の条項で、外注があることを前提にした書き方をしています。

会員は、取引の相手方より開示された秘密情報を、会員間取引に必要最小限の範囲に限り、自己の役員、法令上の秘密保持義務を負う専門家及び会員間取引に基づく業務の再委託先に対して、秘密情報を開示することができるものとします。

ランサーズ利用規約 第18条

ただし、ランサーズの規約は、会員がほかの人に負っている秘密保持義務などに違反する行為も禁じています(第31条)。
発注者との約束で外注を禁じられているのに外注すれば、規約違反にもなりうると読めますが、規約がそう名指ししているわけではありません。
ココナラの加盟店規約と「ルールとマナー」(2026年9月17日に取得した写し)で禁じられているのは、ほかの会員の出品を代わりに行う「出品代行」で、受けた仕事の一部を人に頼むことには触れていません。

フリーランスに外注すると、自分が発注者として義務を負う

見落としやすいのが、外注した側の義務です。
フリーランスに仕事を頼むと、自分がフリーランス法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)でいう「業務委託事業者」になり、条件を書面やメールで示す義務(第3条)を負います。
自分に従業員がいなくても、です。
公正取引委員会のパンフレットはこう書いています。

取引条件の明示義務は、フリーランス同士の取引も対象であるため、発注事業者がフリーランスである場合にも義務が課されます。

公正取引委員会 フリーランス法パンフレット「ここからはじめる」

示すのは、給付の内容、報酬の額、支払期日などです。
知り合いに頼むときも、「何を、いつまでに、いくらで、いつ払うか」をメッセージで送っておく必要があります。

一方、支払期日を受け取りから60日以内にする義務(第4条)や、報酬の減額などの禁止(第5条)は、発注者が「特定業務委託事業者」(従業員を使っている個人か、役員が2人以上いるか従業員を使っている法人)の場合だけです。
自分に従業員がいなければ、第4条と第5条はかかりません。
従業員は、週20時間以上かつ31日以上の雇用が見込まれる人のことです。

なお、元の発注者(法律では「元委託者」)から受けた仕事を回す場合、特定業務委託事業者なら、再委託であることなどを示したうえで、自分が元の発注者から支払いを受ける期日から30日以内という支払期日の決め方も認められています(第4条第3項)。
これは逆の立場、つまり自分が制作会社から仕事を受けるときに出てくる決まりで、支払いサイト60日はきついのかに詳しく書きました。

問い合わせフォームのデータを外注先に扱わせるなら

サイトの制作や保守で、問い合わせフォームに届いた個人情報を扱うことがあります。
これを外注先にも見せる場合は、個人情報保護法の決まりが関わります。

個人情報を検索できる形にまとめて事業に使っていれば、個人でも、扱う人数が少なくても、個人情報取扱事業者にあたる、と個人情報保護委員会のガイドライン(通則編)は書いています。
そのうえで、個人データの扱いを委託するなら、委託先を監督する義務があります。

個人情報取扱事業者は、個人データの取扱いの全部又は一部を委託する場合は、その取扱いを委託された個人データの安全管理が図られるよう、委託を受けた者に対する必要かつ適切な監督を行わなければならない。

個人情報の保護に関する法律 第25条

発注者からフォームのデータを預かっている制作者は、発注者から見れば「委託先」です。
そこから外注先に回すと、外注先は「再委託先」の位置になると考えられます。
ガイドラインは、委託先が再委託するときは、委託元(発注者)が事前に報告を受けたり承認したりすることが望ましい、としています。

(※4)委託元が委託先について「必要かつ適切な監督」を行っていない場合で、委託先が再委託をした際に、再委託先が不適切な取扱いを行ったときは、元の委託元による法違反と判断され得るので、再委託をする場合は注意を要する。

個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」

発注者が外注先まで目を配れていないと、外注先の不適切な扱いが、発注者の法違反とされるおそれがある、ということです。
個人情報を外注先に見せるなら、発注者に伝えてからにするのが、発注者を守ることにもなります。
ガイドラインには、Webサイトの問い合わせフォームを名指しした記述はありませんでした。

秘密保持は、外注先にも同じ義務を

発注者と秘密保持の約束をしているなら、外注先にも同じ義務を負ってもらう必要があります。
先ほどの経済産業省のハンドブックの参考例は、承諾を得て再委託する場合について、こう書いています。

2.前項の事前の書面による承諾に基づき本業務を再委託する場合には、乙は自己が負う義務と同等の義務を再委託先に対して書面にて課すとともに、甲に対して再委託先に当該義務を課した旨を書面により報告し、かつ乙は当該秘密情報の開示に伴う責任を負うものとする。

経済産業省「秘密情報の保護ハンドブック」業務委託契約書の例

IPAのモデル契約書も、秘密情報を開示できる範囲に再委託先を含め、同じ義務を負わせるよう定めています(第41条第4項)。
再委託と秘密保持を定めた法律の条文は見当たらず、契約で決める事柄として書かれています。

私の記録では、外注の記録は1件、再委託で受けたのは10件

自分の記録を数えました。
受注した案件62件(進行中と納品済み。
自分のブログなど自社の案件と、重複や記録の無いフォルダを除く)のうち、作業の一部をほかの人に頼んだ記録があるのは1件(デザイン)でした。
残りの61件には、人に頼んだ記録がありません。

逆に、制作会社や仲介者から再委託を受けていたものは10件ありました(記録で確かめられるもの9件と、構図から推定したもの1件)。
Web制作会社や営業会社から、その会社の顧客のサイト制作を受けたものが5件、一次受けの会社からの二次・三次の受託が2件、仲介者から受けたものが3件(うち1件は推定)です。
外注する側より、外注される側になることのほうが、ずっと多かったことになります。

手元にある契約書4通(受注した案件のもの2通、商談中の案件が1通、失注した案件の合意書の案が1通)では、再委託の扱いが分かれていました。

手元の契約書4通の再委託の定め通数
発注者の事前の書面承諾が無ければ禁止1
原則として認める2
再委託の定めが無い1
(重ねて)再委託先に同じ秘密保持義務を課す2
2026年9月24日時点。原則として認める2通のうち1通は条件なし、1通は発注者のアカウントなどに触れる作業だけ事前の承認が要る形。相手方の文書のため、条項番号や文言は載せていません

取り込んだ募集内容のファイル1,319件のうち、再委託や外注を制限するか、本人が対応することを求めていたものは8件でした。
再委託を禁止・不可としたもの5件、事前の申告を条件にしたもの2件、本人が作業することを明記したもの2件です(重なりあり)。
ほかに、制作会社や法人・チームの応募を断るものが3件、チームでの対応を歓迎するものが1件ありました。
書かれ方は、趣旨をまとめると次のようなものです(原文そのままではありません)。

  • 禁止事項として、第三者への再委託と情報漏えいを並べて挙げる
  • 作業は受注者本人が行うことを原則とし、再委託が生じるなら事前に知らせるよう求める

募集の段階で外注に触れているものは多くありません。
書いていないからといって自由とは限らないので、契約書や、発注者とのやり取りで確かめることになります。

外注する前に確かめたい5つ

  • 契約の型と、禁止の定め:請負か準委任か。契約書や募集に再委託の禁止や事前承諾の定めがないか
  • 発注者に伝えるか:禁止されていなくても、準委任のときや、個人情報・秘密情報を外注先に見せるときは、先に伝えて承諾をもらう
  • 外注先に条件を示す:何を、いつまでに、いくらで、いつ払うかを、メッセージや書面で送る(フリーランス法 第3条)
  • 秘密保持を外注先にも:発注者と約束した秘密保持の義務を、外注先にも同じように負ってもらう
  • アカウントは渡さない:クラウドソーシングのアカウントで外注先にやり取りさせない。案件を別の会員に引き継がせることもしない。発注者とのやり取りは自分がする

外注先の仕事は、発注者から見れば自分の仕事です。
納品の前に、自分の目で確かめる時間も見込んでおく必要があります。

まとめ

  • 請負の契約なら外注は法律の上では本来自由、準委任なら発注者の許諾かやむを得ない事由が要る。どちらでも、契約で禁じていればそれが優先する
  • 外注先のミスの責任は、発注者に対しては受けた自分が負う
  • クラウドソーシング3社の規約は、外注そのものは禁じていないが、アカウントを他人に使わせることは禁じている
  • フリーランスに外注すると、自分に従業員がいなくても、条件を示す義務(フリーランス法 第3条)を負う
  • 個人情報や秘密情報を外注先に見せるなら、発注者に伝え、外注先にも同じ義務を負ってもらう

契約書で見る場所は業務委託契約書で最低限見る場所に、デザインの元データを渡すかどうかはデザインの元データを渡してと言われたら、渡す義務はあるのかにまとめています。

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この記事を書いた人

宮城県東松島市でひとりでWeb制作をやっています。Web業界10年、会社員時代に50を超えるプロジェクトを担当したのち独立。実際に使った道具と、迷って決めたことを書いています。

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