先に立場を書いておきます。
私はまだ、安い単価から抜け出せていません。
この記事は「抜け出す方法」ではありません。
抜け出せていない側から、いま見えている数字をそのまま出す中間報告です。
クラウドソーシングは単価が安い、とよく言われます。
私もそう感じていました。
ただ、自分が応募した案件を全部集計してみたら、思っていたのと違う形が出てきました。
安いのは案件そのものではなかった、という話です。
ふだんはフリーランスでWeb制作をしています(運営者情報)。
クラウドソーシング3社を並行して使っていて、応募した案件の募集内容は手元に保存してあります。
以下はそれを数えたものです。
2万円でECサイトに近いものを作った
2026年の2月、決済機能を外したECサイトのような構成のサイトを、2万円で受けました。
安いと分かって受けています。
理由ははっきりしていて、そのときはとにかく契約が欲しかったからです。
実績も評価も無い状態で、まず1件通したかった。
後悔しているかというと、そこは今も答えが出ていません。
金額だけ見れば割に合っていません。
ただ、あの1件が無ければ次に進めなかったのも確かです。
安く受けたことを間違いだったとも、正解だったとも言い切れない——これが正直なところです。
そして半年近く経ったいま、この単価帯から完全に抜けたかというと、抜けていません。
だからこの記事では「抜け出す方法」を書けません。
代わりに、なぜ抜けにくいのかを数字で見ていきます。
募集の予算は、思ったほど安くない
まず、案件そのものの予算です。
保存してある募集内容から金額が読み取れた223件を、下限の金額で並べました。
| 予算(下限) | 件数 | 割合 |
|---|---|---|
| 〜1万円 | 6 | 2.7% |
| 1万〜3万円 | 23 | 10.3% |
| 3万〜5万円 | 18 | 8.1% |
| 5万〜10万円 | 71 | 31.8% |
| 10万〜20万円 | 62 | 27.8% |
| 20万〜50万円 | 34 | 15.2% |
| 50万円〜 | 9 | 4.0% |
中央値は55,000円でした。
3万円未満は13%しかありません。
半分以上が5万円以上です。
これは正直、私の体感より高い数字でした。
「クラウドソーシングは1万円の案件ばかり」という印象を持っていたのですが、少なくとも私が見ていた範囲ではそうではありませんでした。
ただし、この数字には大きな偏りがあります。
私は安すぎる案件にはそもそも応募していません。
だから、この分布は「世の中の募集」ではなく「私が応募する気になった募集」です。
実際の相場はもっと下に寄っているはずです。
もうひとつ、予算を書かない募集が51件ありました。
金額欄が「ワーカーと相談する」だけの案件です。
予算が読み取れた223件と合わせると、およそ5件に1件は金額が示されていないことになります。
この場合、値段を決めるのはこちらです。
相場が分からないまま数字を出すことになるので、実績が少ない時期ほど低く出しがちになります。
相手が「安いですね」と言ってくるわけではありません。
こちらが勝手に下げて、そのまま通るという形で単価が決まっていきます。
数字で言うと、この「自分で値付けする案件」が5件に1件あります。
相場が分からない時期にその判断を繰り返すことになる、という構造だけは押さえておいたほうがいいと思います。
安いのは案件ではなく、並んでいる人数のほうだった
では何が単価を押し下げているのか。
同じ募集内容から、応募者数を数えました。
606件ぶん取れました。
| 応募先 | 件数 | 応募者数の中央値 | 最大 |
|---|---|---|---|
| クラウドワークス | 406 | 59人 | 370人 |
| ランサーズ | 191 | 70人 | 187人 |
| 全体 | 606 | 61人 | — |
1件の募集に、中央値で61人が並んでいます。
最大は370人でした。
10万円の案件があっても、そこに60人が手を挙げていれば、選ばれるのは1人です。
発注する側からすると、同じような提案が60通並んでいる状態になります。
この状況で、実績の少ない人にとって一番手っ取り早い差別化は金額です。
私が2万円で受けたときも、まさにそう考えていました。
安くすれば通る。
そして実際に通ってしまう。
ここが抜けにくさの正体だと思っています。
案件の予算が安いのではなく、60人の列に並ぶという構造が、こちらに値下げを選ばせる。
単価が安いのは市場のせいというより、その中での自分の立ち位置の問題でした。
高い案件ほど、並んでいる人数も増える
「じゃあ安い案件を避けて、高い案件だけに応募すればいい」と考えたくなります。
私もそう思っていました。
予算と応募者数の両方が読み取れた210件で、予算帯ごとに応募者数を出してみました。
| 案件の予算 | 件数 | 応募者数の中央値 |
|---|---|---|
| 〜5万円 | 43 | 37人 |
| 5万〜10万円 | 64 | 64人 |
| 10万〜20万円 | 60 | 74人 |
| 20万円〜 | 43 | 68人 |
安い案件には37人、10万〜20万の案件には74人。
ちょうど2倍です。
当たり前といえば当たり前でした。
金額が良い案件は、みんな同じように見つけて応募しています。
単価の高いところへ行けば行くほど、列は長くなります。
つまり「安い案件を避ける」という対策は、それ自体では効きません。
避けた先で待っているのは、2倍の人数です。
私が2万円の案件を受けたときのような、人が少ないところで確実に決めるという判断にも、それなりの合理性はあったことになります。
ひとつだけ、20万円以上の帯で応募者数が少し下がっています(74人→68人)。
要求される内容が重くなって手を引く人が出るからかもしれませんが、これは私の推測です。
件数も43件と少ないので、断定はできません。
ついでに、応募先ごとの予算の違いも出ました。
クラウドワークスの予算中央値は5万円、ランサーズは10万円でした。
ランサーズのほうが金額は大きい。
ただし応募者数の中央値もランサーズが70人、クラウドワークスが59人で、こちらも多くなっています。
金額と人数はセットで動きます。
どちらか片方だけを見て場所を選ぶと、たぶん判断を誤ります。
値上げしても、同じ列に並んでいる限りは変わらない
「じゃあ強気の金額を出せばいい」という話になりそうですが、そう単純ではありませんでした。
60人が横並びで比較される場では、高い金額を出した提案は単純に落ちます。
落ちても理由は教えてもらえません。
返事すら来ないことがほとんどです。
実際、私が出した871件の提案のうち、9割は反応がありませんでした(この数字はWeb制作フリーランスが案件を取れない理由に詳しく出しています)。
つまり、応募という入り口を使っている限り、金額はこちらが自由に決められるものではありません。
比較される場に自分から並んでいる以上、価格は相対的に決まります。
抜けるとしたら、値段を上げることではなく、並ばずに済む入り口を持つことのほうだと思っています。
指名で来る仕事、リピート、出品からの問い合わせ。
そこには60人の列がありません。
この話は営業しないで案件を取る方法に書きました。
ただ、私自身はまだそちらの比重を大きくできていません。
だから抜け出せていないと書いています。
方向は見えているが、まだそこにいる、という状態です。
いま同じ場所にいる人へ、言えること
抜け出した人が書く記事なら、ここで方法を並べるところだと思います。
私はまだなので、代わりに数字を見て考えが変わった点を3つ書きます。
- 案件の予算そのものは、極端に低いわけではない。中央値は55,000円だった。「安い案件しかない」という前提は、少なくとも私の見ていた範囲では正しくなかった
- 単価を下げているのは競争率。1件に61人。この構造の中では、値下げが一番簡単な差別化になってしまう
- 安く受けた1件を、無駄だったと決めなくていい。私の2万円の案件は、割には合っていないが、次に進むきっかけにはなった。ただし何度も繰り返すものではない
3つめについて補足すると、危ないのは安く受けること自体ではなく、それが常態になることだと思っています。
1件目は投資として説明がつきます。
10件目も同じ値段なら、それは単価ではなく働き方が固定されています。
私はいま、その境目のあたりにいます。
抜けられたら、そのときにまた書きます。
