フリーランスエージェントの手数料を調べると、「相場は20〜30%」という数字がすぐ出てきます。
ほとんどの記事が同じことを書いています。
私はエージェント経由で約1年参画しました。
そして自分がいくら抜かれていたのか、いまも知りません。
この記事を書くにあたって、その「相場」がどこから来た数字なのかを調べました。
結論を先に書くと、出どころに辿り着けませんでした。
代わりに、法律の側から確かめられたことがあったので、そちらを書きます。
ふだんはフリーランスでWeb制作をしています(運営者情報)。
エージェントには3社登録して、1社から案件をもらいました。
その立場からの話です。
1年参画して、自分の手数料を知らないまま終わった
まず自分の状況から書きます。
エージェント3社に登録し、そのうち1社の紹介で1年ほど参画しました。
フルリモートで、契約終了まで問題なく続きました。
ここまでは何も不満はありません。
ただ、参画先が私に対していくら払っていて、そのうちいくらがエージェントの取り分だったのか。
これは最後まで分かりませんでした。
後ろめたい話をしているつもりはありません。
おそらく多くの人が同じ状態です。
エージェント経由で働くというのは、そういう形になっています。
手数料の相場を検索している人が本当に知りたいのは、たぶん「自分は損をしていないか」だと思います。
私も同じでした。
だから相場を調べたのですが、そこで手が止まりました。
「相場20〜30%」の出どころが見つからない
検索すると、手数料の相場を解説した記事がいくらでも出てきます。
数字はだいたい揃っていて、20〜30%、あるいは10〜30%と書かれています。
問題は、どの記事にも出典がないことです。
私が上位から順に見ていった範囲では、公的な統計や、事業者が公表した資料に辿り着けたものはありませんでした。
数字はあるのに、根拠が示されていません。
「マージン率を公開している」と紹介されている事業者もあったので、その会社の公式サイトを実際に見に行きました。
私が見た範囲では、手数料率の記載を見つけられませんでした。
サイトのどこかにはあるのかもしれませんが、少なくとも探しやすい場所にはありません。
ここで言いたいのは「相場20〜30%は嘘だ」ということではありません。
実態としてその辺りなのかもしれません。
ただ、確かめる手段がない数字を判断の材料にはできないということです。
自分が契約するかどうかを決める場面で、根拠の辿れない数字と自分の条件を比べても意味がありません。
ここは早めに諦めて、別の見方をしたほうがいいと判断しました。
法律は、手数料の開示までは求めていない
そこで、法律の側から確かめました。
2024年11月1日に「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」——通称フリーランス・事業者間取引適正化等法が施行されています。
フリーランスに仕事を出す側に、いくつかの義務を課した法律です。
そのひとつが取引条件の明示です。
公正取引委員会の特設サイトにはこう書かれています。
フリーランスに対して業務委託をした場合、直ちに書面または電磁的方法(メール、SNSのメッセージ等)で取引条件を明示する義務があります。
公正取引委員会「フリーランス法特設サイト」
では何を明示するのか。
示されている項目は9つあります。
- 給付の内容
- 報酬の額
- 支払期日
- 業務委託事業者・フリーランスの名称
- 業務委託をした日
- 給付を受領する日/役務の提供を受ける日
- 給付を受領する場所/役務の提供を受ける場所
- (検査をする場合)検査完了日
- (現金以外の方法で報酬を支払う場合)報酬の支払方法に関して必要な事項
「報酬の額」は入っています。
ただし、これは自分が受け取る額のことです。
仲介した事業者がいくら取っているかは、この9項目のどこにも含まれていません。
つまり、手数料を教えてもらえないのは違法ではありません。
法律が求めているのは「あなたにいくら払うか」を必ず示すことであって、「その裏でいくら抜いているか」を示すことではないからです。
これが分かって、私はむしろすっきりしました。
教えてもらえないのは自分が軽く扱われているからではなく、そういう制度だったということです。
マージン率は聞いてもいい。ただし答える義務はない
ここでよくある疑問が「そもそも聞いていいのか」だと思います。
聞くこと自体は自由です。
失礼にもあたりません。
取引条件の話なので、確認したいと伝えるのは当然のことです。
ただ、さきほどの9項目を見てのとおり、マージン率を答える義務は相手にありません。
だから聞いても「お答えしていません」で終わる可能性があります。
そのときに食い下がっても、法律上その主張は通りません。
逆に言うと、必ず答えが返ってくる質問もあります。
明示義務がある項目がそれです。
自分の報酬がいくらか、いつ支払われるか、何をもって業務完了とみなすか。
ここは聞けば出ますし、出さないほうに問題があります。
私は1年参画するあいだ、マージンの話をしないまま終わりました。
それで困ったことは実際には起きていません。
困るとしたら、後になって「実はかなり抜かれていたのでは」と考え始めたときですが、これは考えても答えが出ない種類の悩みです。
だから、聞くなら参画前に聞く。
聞いて答えが返らなかったとしても、それは相手が不誠実だからではない。
そのうえで提示された金額で判断する。
これが現実的な線引きだと思います。
比べるのは「率」ではなく「手取り」でいい
ここまでを踏まえると、やるべきことは単純になります。
手数料率は分からない。
でも自分が受け取る額は必ず示されます。
法律で義務になっているからです。
であれば、判断材料は最初からそちらだけで足ります。
マージン率が10%でも30%でも、自分の手取りが同じなら、自分にとっての結果は同じです。
率の低さを売りにしていても、元の単価が低ければ手取りは増えません。
逆に率が高くても、そのぶん高い案件を取ってこられているなら手取りは増えます。
マージン率は相手の商売の話で、こちらの生活に効くのは金額のほうです。
「マージンが低いエージェント」という切り口の紹介記事をよく見かけますが、率の低さと自分の手取りは別の話です。
低い率をうたう会社経由の案件と、率を明かさない会社経由の案件を並べたとき、比べられるのは提示された金額だけで、それで十分に比べられます。
そう考えると、複数のエージェントに登録しておく意味がはっきりします。
私が3社に登録したのは特別な戦略があったからではありませんが、結果として比べられる状態にはなっていました。
同じ時期に別々の会社から条件が出れば、率が分からなくても金額で選べます。
相場を調べる時間を、登録数を増やすことに使ったほうが早い。
これが今の私の考えです。
手数料より先に見ておくといいこと
1年参画してみて、手数料率よりよほど生活に効いたことが2つありました。
ひとつは終わり方です。
私の参画は契約終了で終わりました。
自分から抜けたわけではありません。
稼働を1社に預けている以上、終わりを決めるのは相手です。
しかも参画中は日中が埋まっているので、次を探す時間が取れません。
手数料が数%違うことより、この切れ目のほうが金額としては大きく響きます。
この話は常駐案件と受託案件はどちらがいいかに詳しく書きました。
もうひとつは職務経歴書です。
3社に登録して、見られたのはほぼこれでした。
ここに何を書いてあるかで紹介される案件が変わります。
紹介される案件が変われば金額も変わるので、手数料率を気にするより先に効きます。
手数料の相場を知りたくてこの記事に来た人には、期待した答えを返せていないと思います。
ただ、調べた結果として言えるのはその数字は確かめられないし、確かめられたとしても判断は変わらないということでした。
示される金額で選ぶ。
それで十分だと思っています。
