クライアントのサイトを作るとき、「ドメインとサーバーもこちらで用意してもらえますか」と頼まれることがあります。
自分のアカウントでまとめて取ってしまえば早い。
でも、あとで保守をやめたり、発注者が別の制作者に頼んだりしたとき、そのドメインは誰のものなのか。
迷ったことがあると思います。
先に結論を書きます。
- ドメインの権利を持つのは「登録者」です。管理画面のアカウントを誰が持っているかとは別で、Whoisに事業者の名前が出ていても、権利を持つのは登録者として登録された人です
- 制作者の名義で取ると、発注者に使わせていても、ドメインの義務は制作者に残ります。ICANNの契約とドメイン事業者の規約は、ドメインを第三者に使わせても、登録者が義務を負うとしています
- あとから名義を移すには、手続きと待つ期間があります。サーバーの契約はアカウントごとにしか譲れない会社もあります。取得を頼まれても、登録者とアカウントは最初から発注者にしておくのが、あとで困らない形だと考えています
ふだんはフリーランスでWeb制作をしています(運営者情報)。
ここに書くのは、JPRSとICANNの規則、ドメイン事業者とサーバー会社の規約、自分の案件記録で確かめたことだけです。
規約は2026年9月30日時点のもので、各社の細かい手続きは変わることがあります。
ドメインの権利を持つのは「登録者」で、アカウントの持ち主とは別
「○○.jp」の形の汎用JPドメインの規則は、登録をした人を「登録者」と呼んでいます(JPRS 汎用JPドメイン名登録等に関する規則 第4条第2項)。
「.com」などを扱うお名前.comの規約は、登録者をこう定めています。
「登録者」とは,本規約の規定に基づきドメイン名登録契約を当社と締結する主体であるとともに,当該ドメイン名を保有する権限を持ち,ドメイン名の登録情報に「登録者」(Registrant)として指定される者を指します。
お名前.com ドメイン登録規約 第2条
一方で、管理画面にログインする「会員」は別に定められていて、「会員資格は,登録者,担当者に付与されることがあり」と書かれています(同じ第2条)。
つまり、管理画面のアカウントを持っている人と、ドメインの登録者は、同じとは限りません。
さくらインターネットのヘルプも、会員の名義を変える手続きについて、独自ドメインの「Whois 情報(ドメイン情報の登録者名:Registrant)」は変更されない、としています。
制作者が自分のアカウントでドメインを取るときに、登録者の欄に発注者の名前を入れれば、アカウントは制作者・登録者は発注者、という形になります。
逆に、何も考えずに取ると、アカウントも登録者も制作者になります。
なお、ドメインは「買ったもの」ではありません。
IPA(情報処理推進機構)の解説は、こう書いています。
要はドメイン名は「買った」ものではなくて、通常はその登録料を支払うことで、一定期間の権限を得ていることになります。
IPA DX SQUARE「いまさら聞けないインターネットのドメイン名とは」
「借りている」と考えた方が近いでしょう。
Whoisに事業者の名前が出ていても、登録者は自分
ドメインを取ると、登録者の名前や連絡先がWhoisという仕組みで公開されます。
個人の住所を出したくないときに使うのが、事業者の情報を代わりに表示する「Whois情報公開代行」です。
これを使っても、登録者が事業者に変わるわけではありません。
お名前.comの規約は、申し込むときに同意する事項として「代替情報が開示されているドメイン名の権利および義務は,登録者に帰属すること」を挙げています(第26条)。
ムームードメインの規約も「Whois 情報代理公開中であっても、ドメイン名の所有者は乙であり、乙の責任でドメイン名を管理することとします」としています(第27条。
乙は利用者)。
エックスサーバーのよくある質問も、代理公開について「ドメインの所有権は取得されたお客様にあります」と答えています。
制作者が自分の名義で取って、Whoisは公開代行にしていると、発注者からは誰の名義なのかが見えません。
あとで揉めるもとになると考えています。
制作者の名義で取ると、発注者に使わせていても義務は制作者に残る
「.com」などのドメインは、ICANN(ドメインの国際的な管理団体)と契約した事業者(レジストラ)が扱います。
その契約(2013 Registrar Accreditation Agreement)は、ドメインを第三者に使わせる登録者について、こう定めています。
Any Registered Name Holder that intends to license use of a domain name to a third party is nonetheless the Registered Name Holder of record and is responsible for providing its own full contact information and for providing and updating accurate technical and administrative contact information adequate to facilitate timely resolution of any problems that arise in connection with the Registered Name.
ICANN 2013 Registrar Accreditation Agreement 3.7.7.3
ドメインを第三者に使わせるとしても、登録者は登録者のままで、自分の連絡先を出す責任を負う、という意味です。
同じ項は続けて、使わせている相手の連絡先を、損害の合理的な証拠を示した人に7日以内に開示しない場合は、ドメインの不正な使用による損害の責任を負う、としています。
お名前.comの規約にも、同じ趣旨の定めがあります。
登録者は,登録者が第三者に対して,当該登録者のドメイン名の使用を許可した場合においても,当該登録者が当該ドメイン名の保有者であり,従って,当該登録者が規約等に基づく一切の義務を直接負担することに同意します。
お名前.com ドメイン登録規約 第21条
制作者の名義で取って、発注者のサイトに使わせている形は、まさにこれにあたると考えています。
発注者のサイトで何か問題が起きたとき、ドメインの登録者として連絡を受けるのは制作者です。
サーバーも同じです。
ロリポップの規約は、第三者にサービスを使わせる場合や「ユーザーが第三者のために本サービスを利用する場合」でも、第三者の行為と結果について利用者が責任を負い、会社は「ユーザーのみを利用者として取り扱う」としています(第16条)。
制作者のアカウントで発注者のサイトを動かしていれば、制作者が発注者のためにサービスを使っている形で、会社から見た利用者は制作者です。
ムームードメインの規約は、他の人のために代わりに登録することを認めたうえで、その場合は利用者が「契約の一切の責任を負う」としています(第26条)。
代わりに取ること自体は禁じられていませんが、責任は取った人に来ます。
あとから名義を移すには、手続きと待つ期間がある
制作者の名義で取ったドメインを、あとで発注者の名義にすることはできます。
ただ、手間がかかります。
- 登録者を変える:汎用JPドメインでは、ドメインの移転は「登録者と第三者の合意」がある場合に、申請して行うものとされています(汎用JPドメイン名登録等に関する規則 第25条)
- 事業者を変える(移管):JPRSの説明では、事業者を変えるには原則として認証コード(AuthCode)が要ります。申請者が「登録者本人」または「登録者から申請権限を委任された人」であることを確かめるためのもので、有効期限があります
- 公開代行中は移せない:お名前.comとムームードメインの規約は、Whoisの公開代行を使っている間は、他社への移管ができないとしています
「.com」などでは、登録者を変えたあとに、他社へ移せない期間が付くことがあります。
ICANNの移管のルール(Transfer Policy)は、登録者を変えたあと、事業者に60日間の移管ロックをかけるよう求めています(II.C.2)。
そして、移管を必ず断らなければならない場合の1つに、これを挙げています。
The Registrar imposed a 60-day inter-registrar transfer lock following a Change of Registrant, and the Registered Name Holder did not opt out of the 60-day inter-registrar transfer lock prior to the Change of Registrant request.
ICANN Transfer Policy 3.8.5
登録者の変更のあと60日のロックがかかっていて、変更の前にロックを外す手続き(オプトアウト)をしていなければ、移管は断られる、という意味です。
オプトアウトは、事業者が認めてもよいとされているもので、できるかどうかは事業者によります。
ほかにも、登録から60日以内や、移管から60日以内の移管は、事業者が断ってもよいとされています(同じルールの3.7.5・3.7.6)。
「発注者の名義にして、別の会社へ移す」を一度にやろうとすると、待たされることがあります。
この60日のロックは、なくなる方向です。
ICANNの作業部会の最終報告は、登録者の変更後の60日ロックをなくすよう勧告しています(Recommendation 26.4)。
ICANNの理事会は、2026年6月7日にこの報告の勧告を採択しました。
Resolved (2026.06.07.04), the Board adopts the Recommendations, and directs ICANN’s President and CEO, or his designee(s), subject to prioritization, to implement the Recommendations
ICANN Board Resolution 2026.06.07.04
ただ、決議は実施を指示したもので、新しいルールがいつから効くかは書かれていません。
2026年9月30日時点でICANNが公開している移管のルールは、60日ロックのある版のままです。
取得や名義変更の時期によって扱いが変わりうるので、手続きの前に事業者の案内を確かめるのがよいと考えています。
サーバーは、アカウントごとでないと譲れないことがある
サーバーの契約を人に譲る手続きは、会社によって違います。
- エックスサーバー:書面の申請で、XServerアカウントに紐づくすべての契約を第三者に譲ることができます。ただしマニュアルには「サーバーアカウント単位での譲渡はできません」とあります
- さくらインターネット:サービスの譲渡の手続きがあります。ヘルプには「会員IDは変更になります。現在の会員IDを譲渡先に引き継ぐことはできません」とあり、譲渡先が会員IDを用意する必要があります
- ロリポップ:会社の承諾なく契約上の地位を譲ることはできません。法人の利用者が譲る場合と、個人の利用者が法人へ譲る場合に、申請して会社が承諾したときに限って移ります(第19条の2)
エックスサーバーの形だと、自分のアカウントに複数の発注者のサイトを入れている場合、1件だけを契約ごと渡すことはできません。
その場合は、発注者に新しく契約してもらい、データを移すことになると考えています。
更新を忘れて失効すると、第三者に取られることがある
名義と並んで困るのが、更新です。
汎用JPドメインは、更新されずに廃止されても、廃止の翌日から20日間は、廃止時の登録者が登録を回復できます(汎用JPドメイン名登録等に関する規則 第24条の2)。
廃止から1か月は、ほかの人も登録を申請できません(第24条)。
それを過ぎると、第三者が登録できるようになります。
JPRSは、廃止したドメインを第三者が登録して悪用する可能性を挙げたうえで、こう書いています。
廃止されたドメイン名を第三者が新たに登録したとしても、商標の侵害などドメイン名紛争処理方針(DRP)に該当する事由がない限り、第三者によるそのドメイン名の登録・使用を差し止めることはできません。
JPRS「ドメイン名の廃止に関する注意」
「.com」などでは、期限の前に事業者が登録者へ少なくとも2回通知することになっています(ICANN Expired Registration Recovery Policy 2.1.1)。
期限を過ぎたあとは、事業者はいつ削除してもよく(同 2.2.1)、削除から30日間は元の登録者が戻せる期間があります(同 3.1)。
通知が届くのは、登録者やアカウントに登録したメールアドレスです。
制作者のアカウントに置いたまま連絡が途絶えたり、発注者の名義でもメールアドレスだけ制作者のものになっていたりすると、通知を誰も見ない、ということが起こりえます。
私の記録では、発注者の契約で作業する形がほとんどだった
自分の記録を数えました(2026年9月30日時点。
自分のブログなど自社の案件は除く)。
まず、取り込んだ募集内容1,371件のうち、ドメインやサーバーに触れていたのは342件でした。
重なりありで分けると、次のとおりです。
| ドメイン・サーバーに触れた募集342件の中身 | 件数 |
|---|---|
| 発注者がすでに持っている・用意する | 192 |
| 受注者に取得・契約を頼む | 50 |
| まだ無い・未定・相談したい | 63 |
| 名義や所有に触れている | 7 |
名義まで書いている募集は7件だけでした。
その中には、サーバーやドメインを発注者の名義で管理したい、契約が終わったらドメインの移管に応じてほしい、前の制作会社からドメインを引き継ぐ手続きを手伝ってほしい、といったものがありました。
次に、自分が受けた63件のうち、ドメインやサーバーを扱った49件を見ると、発注者が契約していて、私はそのアカウントにログインするか、FTPやWordPressの管理画面などで作業したものが37件でした。
私のアカウントで契約したまま運用しているのは1件だけで、私が取得して発注者の名義に移した記録は0件でした。
9件は記録から分からず、残りの2件は、ドメインではなくサイト制作サービスのプロジェクトを発注者に移したものと、公開先の名義が分からないものです。
その1件は、保守を続ける前提で、私のほうでサーバーとドメインを契約・管理する、と伝えたものです。
保守をやめる話が出たとき、サーバーやドメインのアカウントを発注者のメールアドレスに紐づけ直す作業費と、立て替えていたサーバー代・ドメイン代の精算がかかる、と伝えることになりました。
最初から発注者の契約にしていれば、この話は要りませんでした。
一方、ドメインやサーバーを扱った49件のうち、手間取った記録があるものは27件でした。
発注者の契約で作業した37件に限っても22件です。
ログイン情報が届かない・違っていた、誰が契約しているのか発注者自身も分からない、2段階認証でログインが止まった、DNSやSSLの反映を待った、前のドメインが失効していた、といったものです。
発注者の名義にしておけば安心、ではなく、発注者が自分で管理できる形になっているかまで確かめる必要がある、というのが記録から分かったことです。
提案文1,328件のうち、ドメインやサーバーに触れたものは199件でした。
最近の提案文では、取得を頼まれたときに、こう書いたことがあります。
ドメインとサーバーはお客様名義でのご契約をおすすめし、取得・設定から公開後の動作確認まで対応いたします。
筆者の提案文(2026年)
ドメインとサーバーの取得を頼まれたときに確かめたい4つ
- 登録者とアカウントを発注者にする:アカウントは発注者のメールアドレスで作ってもらい、登録者の欄にも発注者の名前を入れる。お名前.comのように、会員資格を第三者に使わせることや、許諾なく会員向けサービスを使わせることを規約で禁じている事業者もある(第10条)ので、作業でどう入るかは事業者ごとに確かめる
- 通知が届くメールアドレスを発注者にする:更新の案内や移管の確認は、登録者やアカウントのメールアドレスに届く
- 支払いは発注者のカードにする:立て替えるなら、見積もりに実費として書き、保守をやめたときの精算の仕方も決めておく
- 自分の契約に置くなら、引き渡しを先に決める:いつ・いくらで名義を移すか。登録直後や登録者の変更直後は、他社へ移せないことがある点も伝えておく
まとめ
- ドメインの権利を持つのは登録者。管理画面のアカウントの持ち主とは別で、Whoisの公開代行を使っても登録者は変わらない
- 制作者の名義で取ると、発注者に使わせていても、ドメインの義務は制作者に残る(ICANNの契約 3.7.7.3、お名前.comの規約 第21条)
- あとから名義を移すには、合意と申請、原則として認証コードが要る。「.com」などでは登録者の変更後に60日の移管ロックがかかることがある(なくす勧告は2026年6月に採択済みだが、いつから効くかは未定)
- サーバーは、アカウントごとでないと譲れない会社がある
- 私の受けた案件では、発注者の契約で作業したものが37件、自分の契約のままが1件。発注者の契約で作業した37件のうち22件で、ログイン情報・契約者・DNSやSSLの反映などで手間取った記録があった
納品のときにデザインの元データまで渡すかはデザインの元データを渡してと言われたら、渡す義務はあるのかに、契約書で決めておきたいことは業務委託契約書で最低限見る場所にまとめています。
