海外のクライアントから受けた仕事に、消費税はかかるのか。輸出免税の条件と、ドルで受け取った報酬の円換算

書類から地球へ向かう矢印と税率0%の線図と、海外という見出し

Upworkなどで海外のクライアントから仕事を受けると、国内の仕事とは違う疑問が出てきます。
見積もりに消費税を足すのか。
報酬はドルで入るけれど、確定申告ではいくらで書くのか。
Upworkの手数料に日本の消費税はかかっているのか。
条文と国税庁の資料で確かめました。

先に結論を書きます。

  • 日本に住所・居所の無い個人や、本店が海外にある会社(非居住者)へのWeb制作の仕事は、原則として消費税が免除されます(輸出免税)。ただし、相手が日本国内で直接便益を受けるものや、相手の日本の支店を通した取引は免税になりません。輸出免税は、消費税を納める事業者(課税事業者)の話です
  • 免税でも、消費税を納めるかどうかを決める1,000万円の判定(課税売上高)には入ります。課税事業者が免税を受けるには、契約書などの書類を7年間残す必要があります
  • ドルの報酬は、原則として取引日の電信売買相場の仲値(TTM)で円にします。事業所得などは、続けて使うことを条件に、収入を電信買相場(TTB)で換算することもできます

ふだんはフリーランスでWeb制作をしていて、海外の発注者からの仕事も受けています(運営者情報)。
税理士ではないので、ここに書くのは条文と国税庁の資料、Upworkの規約で確かめたことだけです。
個別の判断は、税務署か税理士に確認してください。

目次

非居住者へのWeb制作は、原則として輸出免税

消費税法 第7条は、輸出などの取引について消費税を免除しています。
この免除の対象は、消費税を納める事業者(課税事業者。
インボイスの登録をしている人を含む)です。
第7条第1項は、納税義務が免除される事業者(免税事業者)を除いています。
免税事業者はもともと消費税を納めないので、この章の免除や書類の保存の話は関係しません。

非居住者は、国税庁の基本通達 7-2-15 によれば、日本に住所・居所の無い個人と、日本に主たる事務所の無い法人です。
免除の対象の一つを、施行令 第17条がこう定めています。

法第七条第一項第三号、前項第三号及び第一号から第五号までに掲げるもののほか、非居住者に対して行われる役務の提供で次に掲げるもの以外のもの

消費税法施行令 第17条第2項第7号

Web制作は「役務の提供」にあたるので、相手が非居住者なら、原則として免税になります。
除かれる「次に掲げるもの」は、国内にある資産の運送や保管、国内での飲食や宿泊、そして「これらに準ずるもので、国内において直接便益を享受するもの」です。
国税庁のタックスアンサー No.6551も、同じ説明をしています。

国税庁の基本通達 7-2-16 は、免税の対象から除かれる例として、国内にある不動産の管理や修理、建物の建築請負、国内での飲食や宿泊、理容や美容、日本語学校などでの語学教育など10項目を挙げています。
Web制作を名指しした例はありません。
海外の会社のWebサイトを作って、インターネットで納品する仕事なら、この除外にはあたらないと考えています。
ただ、相手が日本に来てその場で受けるサービスのような形なら、除外にあたる可能性があります。

輸出免税の取引でも、課税事業者は、仕事のために払った経費にかかる消費税を、申告で差し引くことができます(タックスアンサー No.6551)。

なお、Upworkで受けた仕事でも、Upworkの利用規約は、Upwork自身は利用者どうしの契約の当事者ではないとしています。
非居住者かどうかを見る相手は、Upworkではなく発注者です。

相手に日本の支店があるときは、免税にならないことがある

本店が海外にある会社は非居住者ですが、日本に支店や事務所を持っているときは、注意が要ります。
基本通達 7-2-15 は、非居住者の日本の支店などは居住者とみなす、としています。
そして 7-2-17 は、日本の支店がある非居住者への役務の提供は、原則としてその支店を経由したものとして扱い、免税にならないとしています。
例外として免税にできるのは、次の2つの要件を両方とも満たす場合だけです。

  • 国外の本店などとの直接の取引で、日本の支店などが直接にも間接にも関わっていないこと
  • 日本の支店などの業務が、その仕事と同種の業務や関連する業務でないこと

海外の会社でも、日本法人や日本の拠点がある相手なら、どこと契約して誰とやり取りしているかを確かめる必要があります。

ネットで納品しても「電気通信利用役務」にはなりにくい

インターネットで納品すると、消費税で別の扱いがある「電気通信利用役務の提供」にあたるのでは、と気になるかもしれません。
電気通信利用役務にあたると、国内の取引かどうかを、サービスを受ける相手の所在地で判定することになります(消費税法 第4条第3項第3号)。
国税庁の基本通達 5-8-3 は、これにあたらないものの例として、次を挙げています。

2 ソフトウエア開発の依頼を受けた事業者が、国外においてソフトウエアの開発を行い、完成したソフトウエアについてインターネット等を利用して依頼者に送信するもの

国税庁 消費税法基本通達 5-8-3(注)

作ったものを送るのにインターネットを使うだけなら、電気通信利用役務にはあたらない、という考え方です。
ただしこの例は、国外で開発して送る場面のもので、国内の制作者が海外の相手に納品する場面をそのまま述べたものではありません。

免税でも、1,000万円の判定には入る

消費税を納める義務があるかは、原則として前々年(基準期間)の課税売上高が1,000万円を超えるかで決まります(消費税法 第9条)。
輸出免税の売上は、消費税がかからないので、この計算から外してよいと思いがちです。
国税庁の通達は逆のことを書いています。
基本通達 1-4-2 は、基準期間の課税売上高には、第7条《輸出免税等》などにより「消費税が免除される場合の課税資産の譲渡等に係る対価の額を含み」としています。
海外の発注者から受けた仕事の売上も、1,000万円の判定では数に入るということです。
日本で作業した制作は、役務の提供が行われた場所が国内なので、国内の取引です(消費税法 第4条第3項第2号)。
いま免税事業者の人も、基準期間に免税事業者だった場合は受け取った金額の全額が課税売上高になるとされているので(基本通達 1-4-5)、海外の発注者から受けた、国内で行った仕事の売上を含めて数えることになると考えています。
海外の仕事が増えたら、国内の売上だけで判定しないよう気をつけてください。

免税を受けるには、契約書などを7年残す

課税事業者が輸出免税を受けるには、免税の取引だと証明できることが必要です(消費税法 第7条第2項)。
非居住者への役務の提供なら、施行規則 第5条第1項第4号が、契約書その他の書類で、自分の氏名や住所、取引の年月日、役務の内容、対価の額、相手の氏名や住所などが書かれたものを求めています。
保存期間は、その取引をした課税期間の末日の翌日から2か月を経過した日から7年間です。
電子データの書類も含まれ、電子取引のデータ保存に準じた要件で保存するか、紙に整然と出力して保存します(同条第4項〜第6項)。

Upworkのように画面上で契約する場合は、契約の内容と相手の所在地が分かる画面を保存しておくことになると考えています。
画面の記録がこの書類の要件を満たすかを、Upworkを名指しして示した国税庁の資料は見つかりませんでした。

インボイスの交付義務の対象外

インボイス(適格請求書)の交付義務を定めた消費税法 第57条の4第1項は、対象の課税資産の譲渡等から「第七条第一項」などで消費税が免除されるものを除いています。
輸出免税の取引は、インボイスの交付義務の対象外です。

ドルの報酬は、取引日の仲値(TTM)で円にする

所得税の申告は円で行うので、ドルで受け取った報酬は円に直します。
所得税法 第57条の3は、取引をした時の外国為替の売買相場で換算する、としています。
具体的な相場は、国税庁の所得税基本通達が定めています。

法第57条の3第1項((外貨建取引の換算))の規定に基づく円換算(同条第2項の規定の適用を受ける場合の円換算を除く。)は、その取引を計上すべき日(以下この項において「取引日」という。)における対顧客直物電信売相場(以下57の3-6までにおいて「電信売相場」という。)と対顧客直物電信買相場(以下57の3-6までにおいて「電信買相場」という。)の仲値(以下57の3-6までにおいて「電信売買相場の仲値」という。)による。

国税庁 所得税基本通達 57の3-2

原則は、売上を計上する日の仲値(TTM)です。
ただし書きで、事業所得や雑所得などは、続けて使うことを条件に、収入は電信買相場(TTB)、経費は電信売相場(TTS)で換算することもできる、とされています。
注記では、原則として主な取引先の金融機関の相場を使うこと、前月末や前月の平均など1か月以内の相場も続けて使うなら認めることも書かれています。

実際にドルを円に替えた日のレートではなく、売上を計上する日の相場で換算する、というのがポイントです。

では、あとでドルを円に替えたときに、計上した額より増えたり減ったりした分はどうなるか。
国税庁の質疑応答事例「保有する外国通貨を他の外国通貨に交換した場合の為替差損益の取扱い」は、為替差損益は「一般的には異なる通貨の交換(往復)により発生する」もので、交換のときに所得として認識する必要がある、としています。
仕事の報酬で受け取ったドルを円に替える場面を名指しした資料は見つかりませんでしたが、その差額も所得になりうると考えておくのが安全です。

Upworkの手数料と、日本の消費税

Upworkのヘルプは、フリーランス側の手数料をこう説明しています。

It’s the fee you pay on your Upwork earnings. The fee ranges from 0% to 15% per contract, and helps us provide you with payment protection, fraud prevention, dispute resolution, and all the tools that help you run your business more smoothly.

Upwork Help「Freelancer Service Fee」

手数料は契約ごとに0〜15%で、提案やオファーの時点で率が表示されます。
規約(Fee and ACH Authorization Agreement)には、該当する場合は手数料に税金(ヨーロッパの付加価値税など)を上乗せして徴収することがある、と書かれています。
ただし、規約とヘルプを確かめた範囲では、日本の消費税(JCT)を日本のフリーランスの手数料に上乗せするかを書いたものは見つかりませんでした。
実際の明細で、税が上乗せされているかを確かめてください。

手数料が差し引かれた後の入金と、申告の売上の関係は、国内のクラウドソーシングと同じ考え方になります。
クラウドソーシングの売上は、手数料が引かれる前と後のどちらで申告するのかにまとめました。

私の記録では、海外の仕事は4件、消費税を直したのが1件

自分の記録を数えました(2026年9月28日時点)。
取り込んだUpworkの募集32件のうち、発注者の所在地が海外と分かるのは18件でした(アメリカ5・パキスタン4・カナダ2・ほかの7か国が1件ずつ。
日本9件、不明5件)。
予算はすべてドルでした。
国内のクラウドソーシングでも、発注者が海外にいる募集が4件ありました。

海外の発注者から実際に受けた仕事は、3社から4件です。
そのうち消費税の扱いを記録していたのは1件だけで、最初は消費税込みの金額で見積もりを出し、翌日に輸出免税として税抜の額に直していました。
国内の仕事と同じ感覚で見積もると、こういう取り違えが起きます。
相手の国の消費税にあたる税も、こちらからは請求しませんでした。

この1件では、報酬は円で受け取りました。
送金の方法は、PayPal・銀行の海外送金・Wiseを比べてWiseに決め、送金の手数料は相手に負担してもらう形にしました。

海外の仕事を受けるときに確かめたい5つ

  • 相手が非居住者か:日本に支店や日本法人がないか。あるなら、どこと契約して誰とやり取りするか
  • 見積もりの消費税:課税事業者で、輸出免税にあたるなら、消費税を足さない
  • 書類:課税事業者は、契約書や、契約の内容と相手の所在地が分かる記録を7年残す
  • 1,000万円の判定:海外の発注者から受けた、国内で行った仕事の売上も課税売上高に入れて数える
  • 円換算:売上を計上する日の仲値(TTM)が原則。TTBなどを使うなら毎年同じ方法で

まとめ

  • 非居住者へのWeb制作は、原則として輸出免税(課税事業者の話)。国内で直接便益を享受するものや、日本の支店を経由した取引は除かれる
  • 輸出免税の売上も、1,000万円の判定の課税売上高に入る
  • 課税事業者が免税を受けるには、契約書などの書類を7年間残す。インボイスの交付義務の対象外
  • ドルの報酬は、売上を計上する日の仲値(TTM)で円にするのが原則
  • Upworkの手数料に日本の消費税が上乗せされるかは、規約とヘルプからは確かめられなかった

源泉徴収の話はWeb制作の報酬は源泉徴収されるのかに、インボイスの登録の話はインボイス未登録のフリーランスは、仕事を受けにくくなるのかにまとめています。

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この記事を書いた人

宮城県東松島市でひとりでWeb制作をやっています。Web業界10年、会社員時代に50を超えるプロジェクトを担当したのち独立。実際に使った道具と、迷って決めたことを書いています。

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