Web制作の報酬は源泉徴収されるのか

製図風の図解。左に「源泉徴収」の見出し、右は報酬の流れを表す線で、途中から上へ分かれた分が銅色の寸法で10.21%と示されている

請求した金額と、入金された金額が違う。
あるいは募集ページに「源泉徴収される」と書いてある。
どちらも、源泉徴収の話です。

先に結論を書きます。
引かれるかどうかは、次の2つで決まります。

  • 誰が払うか(発注者が源泉徴収の義務を負う立場かどうか)
  • 何の仕事か(その報酬が、法律で対象と決められた種類にあたるかどうか)

そしてWebサイトの制作そのものは、国税庁の通達が挙げている対象の一覧に出てきません。
ただし、この一覧は例示です。
出てこない=対象外、とは言い切れません。
デザインを含む仕事では話が変わります。
順番に見ていきます。

ふだんはフリーランスでWeb制作を請け負っています(運営者情報)。
税理士ではないので、ここに書くのは公開資料の該当箇所と、自分が取り込んだ募集の中身だけです。
判断が必要な場面では税務署か税理士に確認してください。

目次

引くのは発注者の義務。ただし全員ではない

源泉徴収は、報酬を受け取る側が納めるのではなく、支払う側が差し引いて国に納める仕組みです。
国税庁のタックスアンサー「No.2793 報酬・料金等の源泉徴収義務者」には、こうあります。

居住者に対し、国内において源泉徴収の対象となる報酬・料金等の支払をする者は、その報酬・料金等を支払う際に所得税および復興特別所得税(令和9年分以後は所得税、防衛特別所得税および復興特別所得税。
以下同じです。)を源泉徴収する必要があります。

国税庁 No.2793

ここで重要なのは、続く例外です。

ただし、その報酬・料金等の支払者が個人であって、その個人が給与等の支払者でないときまたは給与等の支払者であっても常時2人以下の家事使用人のみに対する給与の支払者であるときは、ホステス等に報酬・料金等を支払う場合を除き、源泉徴収する必要はありません。

同上

つまり発注者が個人事業主で、誰にも給与を払っていないなら、源泉徴収の義務はありません。
相手が法人なら、原則として義務があります。

同じページには、給与を払っている個人についての注意も書かれています。
「給与等(青色専従者給与を含みます。)の支払がある個人は、たとえその給与等について納付すべき税額がない場合であっても、源泉徴収の対象となる報酬・料金等を支払う際に、所得税および復興特別所得税を源泉徴収しなければなりません」
引用の「青色専従者給与」は、所得税法でいう青色事業専従者給与のことです。
家族に専従者給与を出している個人事業主は、ここに当たります。

何の仕事が対象か。Web制作は一覧に出てこない(ただし例示)

対象になる報酬の種類は決まっています。
No.2792 源泉徴収が必要な報酬・料金等とは」が挙げている代表例の1つ目が「原稿料や講演料など」で、これが所得税法第204条第1項第1号にあたります。
デザインの報酬もここに含まれます(所得税基本通達204-6の表6に「デザインの報酬」の区分があります)。

では、どこまでが「デザイン」なのか。
所得税基本通達204-7が9つを挙げています。

通達204-7が挙げるデザイン
工業デザイン(自動車、オートバイ、テレビジョン受像機、工作機械、カメラ、家具等のデザイン及び織物に関するデザイン)
クラフトデザイン(茶わん、灰皿、テーブルマットのようないわゆる雑貨のデザイン)
グラフィックデザイン(広告、ポスター、包装紙等のデザイン)
パッケージデザイン(化粧品、薬品、食料品等の容器のデザイン)
広告デザイン(ネオンサイン、イルミネーション、広告塔等のデザイン)
インテリアデザイン(航空機、列車、船舶の客室等の内部装飾、その他の室内装飾)
ディスプレイ(ショウウインドー、陳列棚、商品展示会場等の展示装飾)
服飾デザイン(衣服、装身具等のデザイン)
ゴルフ場、庭園、遊園地等のデザイン

出典は国税庁の〔原稿等の報酬又は料金(第1号関係)〕です(2026年9月12日閲覧)。

Webサイトやアプリのデザインは、この9つの中に文字としては出てきません。
通達が作られた時期を考えれば当然ともいえます。
ただし「この一覧に無い=対象外」と言い切れるかは別です。
通達の書き出しは「次のようなものがある」であって、これで全部だとは書かれていません。

実際、一覧に無い職種でも対象とされた例があります。
国税庁の質疑応答事例「コピーライター、イラストレーター及びレタリングライターへの報酬」では、広告宣伝用ポスターの制作でそれぞれに支払う報酬について、こう回答されています。

イラストレーターへの報酬……ポスター等グラフィックデザインの重要な要素である「構図、イラスト」に対するものであり、創作又は意匠(デザイン)といえるので、デザインの報酬に該当します。

国税庁 質疑応答事例(源泉所得税)

職種名ではなく「何に対する対価か」で判断されていることが分かります。
同じ照会で、コピーライターへの報酬は「出版物等への掲載を目的としたものであり、原稿の報酬に該当します」とされています。

この考え方でいくと、コーディングやサーバーの設定といった作業そのものは、原稿にもデザインにも当てはめにくいです。
一方で、バナーやポスターに使う絵を作る仕事なら、Web制作の一部でもデザインの報酬に近づきます。
自分の仕事がどちらなのかは、契約の中身で決まります。

デザインと実装を一括で請求したとき

Web制作でよくあるのは、デザインと実装をまとめて1つの金額で請求する形です。
これについては通達204-8に記載があります。

ネオンサイン、広告塔、ショーウインドー、陳列棚、商品展示会場又は庭園等のデザインとその施工とを併せて請け負った者にその対価を一括して支払うような場合には、その対価の総額をデザインの報酬又は料金と施工の対価とに区分し、デザインの報酬又は料金について源泉徴収を行うべきであるが、そのデザインの報酬又は料金の部分が極めて少額であると認められるときは、源泉徴収をしなくて差し支えない。

所得税基本通達204-8

書かれているのはネオンサインや庭園の話で、Webサイトのことではありません。
ただ「デザインと施工を一括で受けたら、総額を区分してデザインの部分だけ源泉徴収する」という考え方は読み取れます。
見積書の内訳をデザインと実装で分けておくと、発注者が判断しやすくなるはずです。

なお消費税の扱いは、順番を間違えないでください。
No.2792の注意書きは「報酬・料金等の額の中に消費税および地方消費税の額(中略)が含まれている場合は、原則として、消費税等の額を含めた金額が源泉徴収の対象となります」が先にあり、続けてこうあります。

ただし、請求書等において、報酬・料金等の額と消費税等の額が明確に区分されている場合には、その報酬・料金等の額のみを源泉徴収の対象とする金額として差し支えありません

国税庁 No.2792

つまり原則は税込の金額が対象で、請求書で区分してあれば税抜の額だけを対象にしても差し支えない、という書き方です。
区分して書いてあるのに発注者が税込で計算していても、それが誤りというわけではありません。

いくら引かれるか

税率は「No.2795 原稿料や講演料等を支払ったとき」に計算式があります。

支払金額(=A)税額
100万円以下A×10.21%
100万円超(A-100万円)×20.42%+102,100円

同ページには「求めた税額に1円未満の端数があるときは、これを切り捨てます」とあり、150万円の場合の具体例として (150万円 - 100万円)× 20.42% + 102,100円 = 204,200円 が示されています。

消費税を分けずに総額30万円で請求した場合、引かれるのは30,630円で、入金は269,370円になります。
引かれた分が消えるわけではありません。
発注者はその額を、支払った月の翌月10日までに国へ納めます(同ページ。
なお納期の特例の対象外と書かれています)。
あなたの名前で先に納められた所得税、という位置づけです。

最終的な税額は1年分の所得で決まるので、引かれすぎていれば確定申告で戻り、足りなければ追加で納めることになると理解しています。
ここは私の理解であって、個別の計算は税務署か税理士に確認してください。

クラウドソーシングでは、募集ページに書いてある

ランサーズでは、募集ページに「源泉徴収される」「源泉徴収されない」と表示されます。
ヘルプには、対象の説明として「依頼画面に「源泉徴収される」と表示されている依頼が対象となります。」とあります。

プラットフォームが代わりに引いてくれるわけではない点も、別のヘルプ記事に明記されています。

ランサーズは仕事のマーケットプレイスで、クライアントとランサーの二者同士で事業取引をしていただくため、当事者ではない弊社からは源泉徴収を行っておりません。

ランサーズ ヘルプ「源泉徴収に対するランサーズの考えを教えてください」

機能が使える条件も決まっています。
ヘルプによると、クライアント側は「プロフィールにて「法人」として登録されており、認証済みの法人 または エンタープライズエントリープランにお申込後弊社審査を通過した法人」であることが条件で、受注側の条件は、本人確認済み本人確認済みのプロフィール住所が国内在住である機密保持確認済みプロフィールで「区分:個人」を選択しているの4つです。
受注する側が「区分:法人」で登録していると、この機能の対象から外れます。

実際の募集では、どれくらい「される」のか

手元の記録で数えました。
数え方を先に書きます。

  • 対象は私が応募候補として取り込んだ募集(Web制作・開発まわりが中心)。各プラットフォームの全体から無作為に選んだものではありません
  • 取り込んだページに載っている項目を、項目名を限定せずに探して数えた(ランサーズは取り込んだ時期によって「源泉徴収」「条件タグ」「その他」「補足」など項目名が変わるため)
  • プラットフォームが出している表示と、発注者が本文に書いたものを分けて数えた
  • 集計日は2026年9月12日
  • 数えたのは下の3媒体だけ。ほかの媒体の募集も取り込んでいるが、この集計には入れていない
プラットフォーム取り込んだ募集源泉徴収の表示があったもの
ランサーズ231件71件に表示あり(される 4件/されない 67件)。残り160件は記載なし
クラウドワークス582件プラットフォームの表示は無し。発注者が本文や金額欄に書いたものが9件(「源泉徴収には対応しておりません」など)
ココナラ278件専用の表示欄は無し。予算欄に「見積り希望(源泉徴収:あり)」と併記されたものが1件

言えるのは次の2つです。
専用の表示欄があるのはランサーズだけで、ココナラは予算欄に併記された例が1件あったこと。
そして表示があった71件のうち67件は「されない」だったことです。
残る160件や、表示のないプラットフォームの募集で実際にどう扱われたかは、この数字からは分かりません。

この偏りは、表示の仕組みから説明できます。
ヘルプの「対象となる依頼:上記の対象クライアントが依頼フォームにて、「源泉徴収をする」を選択した仕事」という記載のとおり、表示が出るのは、条件を満たすクライアントが依頼時に自分で選んだ依頼だけです。
仕事の種類でプラットフォームが判定しているわけではありません。

言い換えると、募集ページの表示は「この発注者が源泉徴収をする設定にしたか」を表しています。
税法上引くべきかどうかの判断は、前半に書いたとおり発注者側にあります。

請求書にどう書くか

源泉徴収される取引では、請求書の書き方で引かれる額が変わります。
前に引いたとおり、報酬と消費税を明確に区分していれば、報酬の額だけを対象としても差し支えない、とされているからです。

税抜30万円の仕事を例にすると、こうなります。

金額
制作費(税抜)300,000円
消費税30,000円
小計330,000円
源泉徴収税額-30,630円(税抜額 300,000円 × 10.21%)
ご請求額299,370円

同じ仕事でも、消費税を分けずに「一式330,000円」と書くと、計算の対象が330,000円になり、引かれる額は33,693円に増えます。
入金額の差は3,063円です。
1回では小さく見えますが、区分して書くだけで済む差です。

なお、これは源泉徴収の対象になる取引での話です。
対象でない取引なら、そもそも源泉徴収税額の行は要りません。
相手が個人事業主で人を雇っていない場合や、仕事の中身がデザインに当たらない場合は、前半で書いたとおり義務がありません。

金額を自分で確かめたいときは、請求書の源泉徴収税額の欄が税抜額の10.21%か、税込額の10.21%かを見てください。
どちらでも誤りではありません。
原則は税込で、区分してあれば税抜だけを対象にしても差し支えない、という関係だからです。
入金額は税込で計算されたほうが少なくなります。

見積もりを出す前に確かめること

最後に、実務で先に確認しておくと楽な点をまとめます。

  1. 相手が法人か、人を雇っている個人か。そうでなければ、そもそも義務がない(常時2人以下の家事使用人だけに給与を払う個人も、義務の対象外)
  2. 仕事の中身にデザインが含まれるか。コーディングだけの契約と、バナーや図版を作る契約では扱いが違いうる
  3. 見積書でデザインと実装を分けておく。一括だと、どこまでが対象か判断しづらい
  4. 請求書で税抜金額と消費税を分けて書く。分けてあれば、税抜の額だけが計算の対象になる
  5. 引かれる前提で資金繰りを見る。税抜30万円(請求33万円)の仕事で、入るのは299,370円。発注者が税込で計算した場合は296,307円

入金の額が思っていたより少ないときは、源泉徴収ではなく入金の遅れ支払いサイトの話であることもあります。
報酬から振込手数料を差し引かれていることもあります。
どれに当たるかで打つ手が違うので、まず切り分けてください。

この記事で引用した制度は、国税庁とランサーズが公開している資料で確認できます。
制度は改正されることがあるので、判断が必要な場面では最新版と、必要なら専門家の確認を取ってください。

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この記事を書いた人

宮城県東松島市でひとりでWeb制作をやっています。Web業界10年、会社員時代に50を超えるプロジェクトを担当したのち独立。実際に使った道具と、迷って決めたことを書いています。

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