自宅で仕事をするWeb制作者は、家賃や電気代をどこまで経費にできるのか。決まった割合は無く、仕事に使った部分を区分できるかで決まる

家の間取り図のうち机とモニターのある1部屋を太線で囲み、その部屋と家全体の幅に寸法線を引いた線図と、家事按分という見出し

フリーランスでWeb制作をしていると、仕事場はたいてい自宅です。
確定申告のときに、家賃や電気代、インターネットの料金をどこまで経費にしていいのか。
「家賃は半分まで」「3割くらいが無難」といった話を聞いて、根拠が分からないまま決めている人も多いと思います。

先に結論を書きます。

  • 仕事と生活の両方に使う費用は、原則として経費になりません。経費にできるのは、仕事に使った部分を明らかに区分できる場合の、その部分です
  • 「何%までなら認められる」という目安は、確認した国税庁の資料には見当たりませんでした。通達に「50%」という数字は出てきますが、目安ではなく、50%以下でも区分できれば経費にできると書かれています
  • 分け方は、使った面積や時間など、説明できる基準で決めます。なぜその割合なのかを、あとで示せるようにしておくことが大事です
  • 生計を一にする家族の持ち家に家賃を払っても、事業所得の経費にはなりません。持ち家なら、固定資産税などの仕事に使う部分が経費になり、住宅ローン控除は仕事に使う部分を除いて計算します

ふだんはフリーランスでWeb制作をしています(運営者情報)。
ここに書くのは、所得税法と政令、国税庁の通達・タックスアンサー・手引きの原文で確かめたことと、自分の案件記録を数えたことだけです。
2026年10月3日時点の情報です。

目次

仕事と生活の両方に使う費用は、原則として経費にならない

出発点は所得税法のこの条文です。

居住者が支出し又は納付する次に掲げるものの額は、その者の不動産所得の金額、事業所得の金額、山林所得の金額又は雑所得の金額の計算上、必要経費に算入しない。

所得税法 第45条第1項

その第1号が「家事上の経費及びこれに関連する経費で政令で定めるもの」です。
家賃や電気代のように、生活と仕事の両方にかかわる費用を、国税庁は「家事関連費」と呼んでいます。
タックスアンサー No.2210の説明です。

(1)家事上の費用は必要経費となりませんが、個人の業務においては一つの支出が家事上と業務上の両方にかかわりがある費用(家事関連費といいます。)となるものがあります。

国税庁 タックスアンサー No.2210「必要経費の知識」

例として挙がっているのは「店舗併用住宅に係る費用(租税公課、家賃、水道光熱費など)」です。
自宅の一室で仕事をするWeb制作者の家賃・電気代・ネット代も、この家事関連費にあたると考えられます。
何もしなければ全部が生活費の扱いで、経費にできる部分を自分で切り出す、という順番です。

経費にできるのは、仕事に使った部分を区分できるとき

どの部分なら経費にできるかは、所得税法施行令が決めています。
経費にできない「政令で定めるもの」から外れるのは、次の2つです。

家事上の経費に関連する経費の主たる部分が不動産所得、事業所得、山林所得又は雑所得を生ずべき業務の遂行上必要であり、かつ、その必要である部分を明らかに区分することができる場合における当該部分に相当する経費

所得税法施行令 第96条第1号

前号に掲げるもののほか、青色申告書を提出することにつき税務署長の承認を受けている居住者に係る家事上の経費に関連する経費のうち、取引の記録等に基づいて、不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき業務の遂行上直接必要であつたことが明らかにされる部分の金額に相当する経費

所得税法施行令 第96条第2号

第1号は誰にでも当てはまり、第2号は青色申告の承認を受けている人の定めです。
第2号の所得の並びに雑所得は入っていないので、副業などで雑所得として申告している人は第1号で考えることになります。

国税庁のタックスアンサーは、家事関連費についてこう書いています。

この家事関連費のうち必要経費になるのは、取引の記録などに基づいて、業務遂行上直接必要であったことが明らかに区分できる場合のその区分できる金額に限られます。

国税庁 タックスアンサー No.2210「必要経費の知識」

これは第2号(青色)の書き方に近い説明です。
白色の人には第1号と、次に見る通達45-2が当てはまります。
どちらの場合も、カギは「仕事に使った部分を明らかに区分できるか」です。

家事按分の「50%」は目安ではない

「家賃は50%まで」という話の出どころと思われるのが、所得税基本通達のこの項目です。

45-2 令第96条第1号に規定する「主たる部分が不動産所得、事業所得、山林所得又は雑所得を生ずべき業務の遂行上必要」であるかどうかは、その支出する金額のうち当該業務の遂行上必要な部分が50%を超えるかどうかにより判定するものとする。
ただし、当該必要な部分の金額が50%以下であっても、その必要である部分を明らかに区分することができる場合には、当該必要である部分に相当する金額を必要経費に算入して差し支えない。

所得税基本通達 45-2

50%は、第1号の「主たる部分」かどうかを判定する数字です。
そしてただし書きで、50%以下でも、仕事に使った部分を明らかに区分できれば、その部分は経費にしてよいとしています。
「50%までなら認められる」「50%を超えてはいけない」という意味ではありません。

何で判定するかについては、ひとつ前の項目がこう書いています。

45-1 令第96条第1号《家事関連費》に規定する「主たる部分」又は同条第2号に規定する「業務の遂行上直接必要であったことが明らかにされる部分」は、業務の内容、経費の内容、家族及び使用人の構成、店舗併用の家屋その他の資産の利用状況等を総合勘案して判定する。

所得税基本通達 45-1

国税庁の手引きには「80%家事分」「40%家事分」といった記載例が出てきますが、どれも例として置かれた数字です。
「家賃は◯%」「電気代は◯%」という目安は、確認した国税庁の資料(法令・通達・タックスアンサー・手引き)には見当たりませんでした。
割合は、人ごとの使い方から決めるものです。

なお、国税庁には在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ(源泉所得税関係)という資料があります。
通信費の業務の分は、1か月の在宅勤務日数を該当月の日数で割り、さらに1/2をかける式です。
電気料金は、これに業務のために使用した部屋の床面積を自宅の床面積で割った割合もかけます。
1/2は、睡眠時間8時間を除いた16時間のうち、法定労働時間8時間の割合として出した数字です。
ただしこれは、会社が在宅勤務の社員に費用を精算するときの源泉所得税の扱いで、自営業の家事按分の基準として書かれたものではありません。
作業時間で分けるときの考え方の参考にはなると思います。

分け方は、面積や時間など説明できる基準で決める

では、どう分けるのか。
白色申告者向けの国税庁の決算の手引きに、こう書かれています。

(注) 上の②や③などの費用を家事関連費といいますが、家事関連費の家事分と事業分との区分は、使用面積や保険金額、点灯時間などの適切な基準によってあん分して計算します。

国税庁「決算の手引き(一般用)」令和7年分

消費税の通達(11-1-4)も、家事と事業の両方に使う資産を取得したときは「使用率、使用面積割合等の合理的な基準」で分ける、としています(パソコンなどの資産を買ったときの定めですが、分け方の考え方は同じです)。
Web制作の仕事に当てはめると、たとえば次のような分け方が考えられます(どれも国税庁の資料に載っている例ではなく、上の「適切な基準」を当てはめた私の考えです)。

費用基準の例残しておくもの
家賃仕事に使う部屋の面積 ÷ 家全体の面積(共用の部屋で仕事をするなら、さらに使う時間の割合)間取り図、仕事に使う部屋の説明
電気代仕事をする時間や部屋の割合、仕事に使う機器作業時間の記録
ネット回線仕事に使う時間の割合作業時間の記録
スマホ代仕事の通話・連絡に使う割合明細(仕事の通話が分かるもの)
自宅で仕事をする場合の分け方の例(国税庁の資料の例ではなく、「使用面積や点灯時間などの適切な基準」を当てはめた考え方)

たとえば、家賃が月10万円で、家全体が40平方メートル、そのうち仕事にだけ使う部屋が10平方メートルなら、面積の割合は25%です。
家賃のうち年30万円(10万円×12か月×25%)を経費にする、という計算になります(数字は説明のための例です)。

大事なのは、なぜその割合にしたかを、あとで自分の言葉と資料で説明できることだと考えています。
通達45-1が「総合勘案して判定する」としている以上、決まった数字に合わせるより、自分の使い方に合った根拠を持っておくほうが筋が通ります。

帳簿の付け方にも手がかりがあります。
国税庁の帳簿の記帳のしかたは、こう書いています。

家事上の経費に関連する経費(家事関連費)については、家事上の経費を除いて記載するのが原則ですが、その使用状況に基づき年末に一括して家事上の経費(減算)を、次の記載例のように記載することもできます。

国税庁「帳簿の記帳のしかた(事業所得者用)」

毎月の支払いはいったん全額を記帳し、年末に家事分をまとめて差し引く書き方もできる、ということです。
割合の基準を先に決めておけば、年末の作業は掛け算だけで済みます。

自分の受注66件では、先方へ出向いた記録は0件だった

そもそもWeb制作の仕事は、どれくらい自宅で完結するのか。
受注した案件66件(自社のサイトの案件を除く)の記録を数えました(2026年10月3日時点)。

数えたもの件数
先方の事務所・店舗・現地へ出向いた記録がある0件
オンラインの打ち合わせの記録がある(その案件のフォルダにあるもの)29件
打ち合わせの記録が無く、メッセージのやり取りだけ27件
受注した案件66件の記録(自社の案件を除く。2026年10月3日時点)。残り10件は、同じ先方の別フォルダに議事録があるオンラインの打ち合わせ5件、打ち合わせの手段の記載が無いもの3件、実施を確認できないもの2件

出向いた記録はありませんでした。
記録に残っていないだけの可能性はあります。
記録にある打ち合わせの手段は、ZoomやGoogle Meet、サービスのビデオ通話、電話で、対面の打ち合わせの記録は0件でした。
応募の段階で取り込んだ募集内容1,407件でも、先方へ出向くことが必須と読めるものは5件(週1回の対面の打ち合わせ、訪問対応、出社など)だけでした。

Web制作の仕事は、先方へ出向かずに進められることが多い、というのが自分の記録から言えることです。
そうなると、仕事をする場所として自宅の一部を使う人は多いはずで、割合の根拠を一度決めて残しておく価値があると考えています。

家族の持ち家に住んでいる場合と、持ち家の場合

生計を一にする家族に家賃を払っても、事業所得の経費にはならない

親の家に住んでいて、仕事部屋の家賃を親に払う。
この場合、生計を一にしていれば、その家賃は経費になりません。
タックスアンサー No.2210 はこう書いています。

イ 生計を一にする配偶者その他の親族に支払う地代家賃などは必要経費になりません。
逆に、受け取った人も所得としては考えません。

国税庁 タックスアンサー No.2210「必要経費の知識」

根拠の所得税法第56条は、不動産所得・事業所得・山林所得を生ずべき事業についての定めで、雑所得は条文に入っていません。
副業などで雑所得として申告している人の扱いはこの条文からは読み取れないので、税務署に確かめるのが確実です。
また、第56条は「生計を一にする」親族についての定めなので、生計を別にしている親族に払う家賃は、この条文の対象外です。
同じページには、生計を一にする親から業務のために借りた建物にかかる固定資産税などは、借りた側の経費になる、とも書かれています。

持ち家なら、固定資産税などの仕事に使う部分が経費になる

持ち家の場合は家賃がない代わりに、固定資産税や建物の減価償却などが分ける対象になります。
タックスアンサー No.2210 は「固定資産税は業務用の部分に限って必要経費になります」としています。
住んでいた家を途中から仕事にも使い始めた場合、仕事に使う前の期間の減価の額は、耐用年数を1.5倍にした年数で旧定額法により計算する定めがあります(所得税法施行令第85条・第135条、質疑応答事例「非業務用資産を業務の用に供した場合」)。

住宅ローンの利息はどうか。
住宅ローンを名指しした説明は見当たりませんでしたが、タックスアンサー No.2210 には、借入金の利息についてこう書かれています。

ハ 業務用資産の購入のための借入金など、業務のための借入金の利息は必要経費になります。

国税庁 タックスアンサー No.2210「必要経費の知識」

国税庁の決算の手引きにも「事業用の建物などの資産を取得するための借入金の利子も必要経費になります」とあります。

家の一部を仕事に使っているなら、上の家事関連費の分け方と合わせて、仕事に使う部分に対応する利子は経費にできると考えられます。

住宅ローン控除を受けている人は、もう一つ注意があります。
家の一部を仕事に使っていると、控除の計算に使う借入金は、居住に使う部分の床面積の割合をかけた金額になります(租税特別措置法施行令 第26条第7項)。
ただし、居住に使う部分がおおむね90%以上なら、全部を居住用として計算してよいとされています(措置法通達 41-29)。
そもそも控除を受けるには、床面積の2分の1以上を自分の居住に使っていることが要件です(タックスアンサー No.1211-1)。
仕事に使う割合を大きくすると、住宅ローン控除が減ることがあります。
控除の対象は居住に使う部分、経費にできるのは仕事に使う部分、と分かれる形です。

消費税を納めている人は、電気代などに同じ割合が効く

課税事業者として消費税を納めていて、仕入れの実額で仕入税額控除を計算している人は、電気代やネット代などの消費税を控除に使うときも、同じ分け方になります。
消費税法基本通達はこう書いています。

11-1-5 個人事業者が行う水道光熱費等の支払のうち課税仕入れに該当するのは、所法令第96条各号《家事関連費》に掲げる経費に係る部分に限られるのであるから留意する。

消費税法基本通達 11-1-5

所得税で経費にした部分だけが、消費税でも仕入れとして扱えるということです。
ただし、住宅の貸付けは消費税の非課税取引です(タックスアンサー No.6201)。
家賃が非課税かどうかは、契約で決まった用途で判断されます。

(注)貸付けに係る契約において住宅として借り受けている建物を賃借人が賃貸人との契約変更を行わずに、当該賃借人において事業の用に供したとしても、当該建物の借受けは、当該賃借人の課税仕入れに該当しないのであるから留意する。

消費税法基本通達 6-13-8

契約上は住宅として借りている家の家賃は、契約を変えずに仕事に使っても、仕入税額控除の対象になりません。
住宅と事務所を一括して借りる契約なら、住宅として貸し付けた部分だけが非課税になる、と通達6-13-5は書いています(消費税法基本通達 第6章第13節)。

自宅を仕事場にすると、ほかにも関わること

自宅を仕事場にして家賃の一部を経費にすると、税金の別の場面にも関わってきます。
個人事業税では、東京都が自宅の事務所と地代家賃の計上を「事務所等」の判断材料にした答申があります(Web制作に個人事業税はかかる?)。
開業届や特定商取引法の表示で自宅の住所をどう扱うかは、開業届の住所に自宅を書くリスクにまとめました。

まとめ

  • 家賃・電気代・ネット代など、生活と仕事の両方に使う費用(家事関連費)は、原則として経費にならない(所得税法第45条)
  • 経費にできるのは、仕事に使った部分を明らかに区分できる場合のその部分(所得税法施行令第96条、タックスアンサー No.2210)
  • 通達の50%は「主たる部分」の判定の数字で、50%以下でも区分できれば経費にできる(所得税基本通達45-2)。「何%まで」という目安は確認した国税庁の資料に見当たらない
  • 分け方は使用面積や時間など適切な基準で決め、その根拠を残しておく
  • 生計を一にする家族に払う家賃は、事業所得の経費にならない。持ち家は固定資産税などの仕事の部分が経費になり、住宅ローン控除は仕事に使う部分を除いて計算する(居住部分がおおむね90%以上なら全部)

家事按分の割合を決めたら、次は売上をどの年に入れるかです。
年末の納品が近い時期は、年末に納品して、入金が翌年になった売上は、どちらの年に入れるのかもあわせて確かめてみてください。

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この記事を書いた人

宮城県東松島市でひとりでWeb制作をやっています。Web業界10年、会社員時代に50を超えるプロジェクトを担当したのち独立。実際に使った道具と、迷って決めたことを書いています。

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