報酬の支払いが遅れたら、フリーランスは遅延損害金をいくら請求できるのか

支払期日と書かれたカレンダーから、チェックの付いた入金のカレンダーへ点線の矢印が伸び、下に30日と年3%の寸法線が添えられた線図と、支払いが遅れたらという見出し

支払期日を過ぎても報酬が振り込まれない。
催促して1か月後にようやく入金された。
こういうとき、遅れた日数の分を「遅延損害金」として上乗せして請求できるのか、できるならいくらなのか。
年末に向けて未入金の報酬を見直す前に、民法と、公正取引委員会・法務省の資料で確かめました。

先に結論を書きます。

  • 契約書に定めが無くても、遅れた分の損害賠償(遅延損害金)は請求できます。率は法定利率で、損害があったことを証明する必要はありません(民法 第419条)
  • 法定利率は年3%です。2026年4月1日から2029年3月31日までの期も年3%のままです(民法 第404条、法務省の公表)。年6%(商事法定利率)と年5%は、2020年3月31日までの数字です(民法の年5%は、その日までに遅れが始まっていた分には残ります)
  • 私の計算では、33万円の報酬が30日遅れた場合、年3%で約813.7円です。1円未満を切り捨てると813円、通貨法の端数の決まりに合わせると814円になります
  • 契約書で法定利率より高い率を決めていれば、その率になります(民法 第419条第1項ただし書・第420条第1項)
  • 取適法の対象になる取引では、年14.6%の遅延利息を払う義務が発注者にあります。数え始めは支払期日の翌日ではなく、受領日から起算して60日を経過した日です(取適法 第6条第1項)
  • フリーランス法には、遅延利息の率を定めた条文がありません。フリーランス法だけが及ぶ取引は、民法の年3%か、契約で決めた率になると私は読んでいます

ふだんはフリーランスでWeb制作をしています(運営者情報)。
弁護士ではないので、ここに書くのは、法令と公的な資料の原文で確かめたことだけです。
2026年10月13日時点の情報です。
実際に請求するかどうか、自分の取引が当てはまるかの判断が必要な場面では、弁護士や公正取引委員会の窓口に確かめてください。

目次

遅延損害金は、契約書に書いていなくても請求できる

遅延損害金は、お金を払う債務の支払いが遅れたときの損害賠償のことです(法務省の資料も「金銭債務の遅延損害金」と書いています)。
根拠は、債務不履行による損害賠償を定めた民法 第415条と、お金の債務についての特則である第419条です。

金銭の給付を目的とする債務の不履行については、その損害賠償の額は、債務者が遅滞の責任を負った最初の時点における法定利率によって定める。
ただし、約定利率が法定利率を超えるときは、約定利率による。

民法 第419条第1項

同じ条の第2項は、この損害賠償について「債権者は、損害の証明をすることを要しない。」としています。
入金が遅れて実際にいくら困ったかを示さなくても、法定利率で計算した額を請求できる、ということです。
第3項は、債務者が不可抗力を理由に断ることもできないとしています。

契約書に遅延損害金の条項が無くても、この条文があるので請求そのものはできます。
条項があるかどうかで変わるのは、率です。

法定利率は年3%。年6%と年5%は2020年3月までの数字

民法 第404条第2項は、法定利率を年3パーセントとしています。
同じ条の第3項で、3年を1期として、1期ごとに見直す仕組みになっています。
いまの期(2026年4月1日から2029年3月31日まで)について、法務省はこう公表しています。

第1期の基準割合0.7%からの変動が1%未満ですので、第3期においては、法定利率は3%のまま変動しないこととなりました

法務省「令和8年4月1日以降の法定利率について」

同じページ(令和8年4月1日以降の法定利率について)は、2029年4月1日以降の法定利率を「未確定(変動の可能性あり)」としています。

遅延損害金の率を調べると、「事業の取引は年6%」という説明が見つかることがあります。
これは商法 第514条にあった商事法定利率のことで、法務省民事局の「民法(債権関係)の改正に関する説明資料-重要な実質改正事項-」の「法定利率に関する見直し」の章は、改正前の率を民事が年5%、商事が年6%と書いたうえで、商事法定利率の廃止を挙げています。
現行の商法 第514条は「削除」になっています(e-Gov で、2020年3月31日時点の版には年6分とする条文があり、2020年4月1日施行の版から削除になっていることを確かめました)。
法務省の上のページによると、民法の法定利率が年5%だったのも2020年3月31日までです。
ただし、民法の法定利率については、2020年4月1日より前に遅滞の責任を負った場合の遅延損害金は、前の率のままです(民法の一部を改正する法律(平成29年法律第44号)附則 第17条が「なお従前の例による。」としています)。
商事法定利率のほうの経過措置は、今回は原文を確かめられていないので書きません。

率が変わる期をまたぐ場合に、どの時点の率を使うかも条文にあります。
上で引いた第419条第1項のとおり、債務者が遅滞の責任を負った最初の時点の法定利率です。
遅れている途中で法定利率が変わっても、最初の率のまま計算することになります。

遅延損害金は、いつから数えるのか

民法 第412条第1項は「債務の履行について確定期限があるときは、債務者は、その期限の到来した時から遅滞の責任を負う。」としています。
契約書や発注書に「11月30日払い」のように支払期日が決まっていれば、その日までに払われなかったときから遅れになります。

支払期日を決めていなかった場合は、第3項が当てはまります。
債務者は、履行の請求を受けた時から遅滞の責任を負います。
請求書を送るなどして支払いを求めるまでは、遅延損害金は数えられないことになります。

ただ、あとで書く取適法の対象になる取引と、フリーランス法で発注者が特定業務委託事業者に当たる取引では、支払期日を定めなかったときは、給付を受領した日が支払期日と定められたものとみなされます(取適法 第3条第2項、フリーランス法 第4条第2項。
フリーランス法では、再委託であることなどを明示した再委託の場合は、受領した日ではなく元委託支払期日です。
同条第4項)。
このみなしの支払期日が、民法 第412条の期限としてどう扱われるかは、条文からは読み切れませんでした。

支払期日が土日や年末年始に当たって入金が翌営業日になった場合は、そもそも遅れに当たるのかが先に問題になります。
これは支払日が土日や年末年始に当たったら、フリーランスの報酬はいつ振り込まれるのかに書きました。

遅延損害金の計算例:33万円が30日遅れたら年3%で800円あまり

ここからは私の計算です。
第419条には、計算の式までは書かれていません。
次の3つを前提にしました。

  • 支払期日の翌日から、入金された日までを数える。民法 第140条は、日によって期間を定めたときは期間の初日を算入しないとしていて、消費者契約法 第9条第1項第2号も「支払期日の翌日からその支払をする日までの期間」という数え方をしています。これに合わせました
  • 1年を365日として日割りする(遅れた金額 × 率 × 日数 ÷ 365)。日割りの分母を定めた条文は、私が読んだ範囲(民法 第404条・第419条、取適法 第6条)にはありませんでした
  • 1円未満は切り捨てる。請求額を控えめにするための私の前提です。通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律 第3条第1項は、債務の弁済を現金の支払により行う場合について、50銭未満の端数は切り捨て、50銭以上1円未満の端数は1円として計算するとしています(特約がある場合を除く)。振込にこの決まりがどう当たるかは、条文からは読み切れませんでした

たとえば、33万円(税込)の報酬の支払期日が2026年11月30日(月)で、入金が12月30日(水)だった場合、12月1日から12月30日までの30日です。
330,000円 × 3% × 30日 ÷ 365 は約813.7円で、1円未満を切り捨てると813円になります。
通貨法の端数の決まりに合わせるなら814円です。

金額と日数を変えると、次のようになります。
年14.6%の列は、あとで書く取適法の率や、契約書でその率を決めていた場合の額です。
取適法の場合の日数は、支払期日の翌日からではなく、受領日から起算して60日を経過した日から数えた日数です。

遅れた金額遅れた日数年3%年14.6%
110,000円30日271円1,320円
110,000円90日813円3,960円
330,000円30日813円3,960円
330,000円90日2,441円11,880円
550,000円30日1,356円6,600円
550,000円90日4,068円19,800円
筆者の計算。遅れた金額 × 率 × 日数 ÷ 365 で、1円未満は切り捨て。年3%の813円の2か所は、切り捨てる前が約813.7円なので、50銭以上を1円とする数え方では814円になる。契約書に計算方法の定めがあればそちらによる

年3%だと、数十万円の報酬が1か月遅れても数百円から千円台です。
金額だけを見ると、請求の手間に見合わないと感じる人もいると思います。

契約書で法定利率より高い率を決めていれば、その率になる

第419条第1項のただし書は、約定利率が法定利率を超えるときは約定利率による、としています。
民法 第420条第1項も「当事者は、債務の不履行について損害賠償の額を予定することができる。」としていて、契約書に、支払いが遅れたときの遅延損害金の率を決めた条項があり、それが法定利率を超えていれば、その率で計算します。
法定利率より低い率を決めていた場合の扱いは、この2つの条文からは読み切れなかったので、ここでは書きません。

手元の契約書や発注書に遅延損害金の条項があるかどうかは、先に見ておく場所です。
契約書で確かめる場所は業務委託契約書で最低限見る場所にまとめています。

率に上限があるかどうかに関わる条文として、消費者契約法 第9条第1項第2号があります。
消費者が支払期日までに払わない場合の損害賠償の予定や違約金のうち、年14.6パーセントで計算した額を超える部分を無効としています。
ここでいう消費者は、事業として又は事業のために契約の当事者となる場合を除いた個人です(同法 第2条第1項)。
事業のためにサイトを発注する会社や個人事業主との契約は、この条文の対象ではありません。
事業と関係なく個人から制作を頼まれた場合には、関わってくる条文です。

取適法の対象なら、遅延利息は年14.6%。数え始めは受領から60日を過ぎた日

2026年1月1日に施行された中小受託取引適正化法(取適法。
以前の下請法)には、遅延利息の条文があります。

委託事業者は、製造委託等代金の支払期日までに製造委託等代金を支払わなかつたときは、中小受託事業者に対し、中小受託事業者の給付を受領した日から起算して六十日を経過した日から支払をする日までの期間について、その日数に応じ、当該未払金額に公正取引委員会規則で定める率を乗じて得た金額を遅延利息として支払わなければならない。

製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律(取適法) 第6条第1項

率は公正取引委員会の規則で「年十四・六パーセントとする。」と決まっています。
契約書に遅延損害金の条項が無くても、この率です。

気をつけたいのは、数え始めの日です。
支払期日の翌日ではなく、受領した日から起算して60日を経過した日から数えます。
支払期日が受領から60日より前にある取引では、支払期日を過ぎてから60日を経過する日までの間は、この条文の対象になりません。
その間は民法の法定利率(年3%)か契約で決めた率で数えることになる、と私は読んでいます。

例で数えます。
10月5日(月)に納品して受領され、支払期日が11月30日(月)、入金が12月30日(水)だったとします。
受領日を1日目とすると、60日目は12月3日(木)です。
取適法 第3条第2項が「六十日を経過した日の前日」を60日以内の最後の日として扱っているので、60日を経過した日は12月4日(金)と私は読んでいます。
12月4日から12月30日までは27日で、330,000円 × 14.6% × 27日 ÷ 365 は3,564円です。
支払期日の翌日の12月1日から12月3日までの3日は、年3%で数えると81円です。

同じ条の第2項は、発注者が受注者の責任でないのに代金を減額したときも、減らした額に同じ率の遅延利息を払うよう定めています。

公正取引委員会・中小企業庁のテキストは、この条文について次のように書いています。

支払遅延及び減額は本法に違反する行為であり、遅延利息を支払えば代金の支払を遅らせたり代金を減額したりしてよいという趣旨ではない。

公正取引委員会・中小企業庁「中小受託取引適正化法テキスト」

支払遅延(第5条第1項第2号)があったとき、公正取引委員会は、代金や遅延利息を支払うよう発注者に勧告します(第10条第1項)。

取適法の対象になるのは、取引の内容(第2条第3項の情報成果物作成委託など)と、発注者・受注者の資本金または従業員の数(第2条第8項・第9項)の両方の条件に当てはまる取引です。
発注者の条件は、委託するものによって違います。
受注者が個人の場合で言うと、プログラムの作成の委託は、発注者が資本金1,000万円を超える法人か、従業員が300人を超える法人のとき(第2条第8項第1号・第2号・第5号。
プログラムは政令で定める情報成果物です)。
プログラム以外の情報成果物(文字や図形などで構成されるもの)の作成の委託は、発注者が資本金1,000万円を超える法人か、従業員が100人を超える法人のときです(同項第3号・第4号・第6号)。
従業員が100人を超えていれば何の委託でも対象になる、という意味ではありません。
発注者が個人の場合や、資本金1,000万円以下で従業員100人以下の法人の場合は、第2条第8項のどの号にも当てはまりません(このほか同条第10項に、ほかの法人から支配を受けている法人が再委託をする場合について、条件を満たすときに再委託をする法人を委託事業者とみなす定めがあります。
条件が細かいので、ここでは条文の場所だけ挙げます)。

フリーランス法には、遅延利息の率の定めが無い

フリーランス法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)は、発注者が特定業務委託事業者の場合に、支払期日までに報酬を支払うことを義務づけています(第4条第5項)。
違反があったときに公正取引委員会が勧告できるのは「速やかに報酬を支払うべきことその他必要な措置をとるべきこと」です(第8条第2項)。

e-Gov の現行の条文(2026年10月13日に取得)を全文検索したところ、「遅延」「利息」という語は、本則にも附則にも1件もありませんでした。
取適法 第6条のように率を定めた条文は、フリーランス法にはありません。
取適法の対象にならず、フリーランス法だけが及ぶ取引では、遅延損害金は民法の年3%か、契約で決めた率になると私は読んでいます。

請求するかどうかと、遅延損害金の伝え方

遅延損害金を実際に請求するかどうかは、条文からは決まりません。
私自身は、遅延損害金を請求した経験がありません。
ここは、条文から言えることだけを書きます。

  • 請求するなら、根拠(契約書の条項か、民法 第419条)、率、数えた期間、金額を示すことになります。計算の前提(日割りと端数)も添えておくと、相手が確かめられます
  • 年3%では金額が小さいので、遅れそのものを早く解消するほうを優先する考え方もあります。催促の順番はフリーランスの入金が遅いときにやることに書きました
  • これから結ぶ契約なら、遅延損害金の率を契約書に入れておくと、遅れたときに何で計算するかで迷いません

まとめ:遅延損害金の率と数え始めの日

  • 契約書に定めが無くても、支払いが遅れた分の遅延損害金は請求できる。損害の証明は要らない(民法 第419条)
  • 率は法定利率の年3%。2029年3月31日までの期は年3%で、その先は未確定(民法 第404条、法務省の公表)。年6%の商事法定利率は廃止済み。33万円が30日遅れた場合で800円あまり(私の計算)
  • 契約書で法定利率を超える率を決めていれば、その率(民法 第419条第1項ただし書・第420条第1項)
  • 支払期日が決まっていれば、その期限が来た時から遅れになる。決めていなければ、請求を受けた時から(民法 第412条)
  • 取適法の対象になる取引では、受領日から起算して60日を経過した日から年14.6%の遅延利息(取適法 第6条)
  • フリーランス法には遅延利息の率の定めが無い

入金が遅れたときに最初にやることは、フリーランスの入金が遅いときにやることにまとめています。

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この記事を書いた人

宮城県東松島市でひとりでWeb制作をやっています。Web業界10年、会社員時代に50を超えるプロジェクトを担当したのち独立。実際に使った道具と、迷って決めたことを書いています。

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