フリーランスのWeb制作者が青色申告にするには、いつまでに何を出すのか。承認申請は原則3月15日まで、65万円の控除は2027年分からe-Taxが条件になる

チェック欄のある申請書から3/15と書かれたカレンダーへ破線の矢印が伸びる線図と、青色申告という見出し

フリーランスでWeb制作を始めたとき、「青色申告にすると65万円控除される」と聞いて、何をいつまでに出せばいいのか迷った人は多いと思います。
開業届と青色申告の申請は別の書類なのか。
年の途中で始めたら、いつまでに出せばいいのか。
副業でも青色申告にできるのか。

先に結論を書きます。

  • 青色申告にするには「青色申告承認申請書」を税務署に出します。期限は、その年の3月15日まで。1月16日以後に開業した年は、開業した日から2か月以内です。期限を過ぎたら、翌年分からになります
  • 青色申告ができるのは、事業所得・不動産所得・山林所得のある人です。副業の収入を雑所得として申告している人は、青色申告ができません
  • 開業届の期限は、2026年1月1日以後に開業した分から「その年分の確定申告期限まで」に変わりました。以前は「1か月以内」でした
  • 65万円の控除は、2027年分から変わります。2026年分までは書面でも複式簿記なら55万円を受けられましたが、2027年分からはe-Taxで出すことが65万円の条件になり、書面で出すと10万円までです。優良な電子帳簿などの条件を満たせば75万円になります

ふだんはフリーランスでWeb制作をしています(運営者情報)。
ここに書くのは、所得税法・租税特別措置法とその改正法の附則、国税庁の通達・タックスアンサー・手続の案内・リーフレットの原文で確かめたことと、自分が取り込んだ募集の記録を数えたことだけです。
2026年10月6日時点の情報です。

目次

青色申告ができるのは、事業所得のある人

所得税法は、青色申告ができる人をこう定めています。

不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき業務を行なう居住者は、納税地の所轄税務署長の承認を受けた場合には、確定申告書及び当該申告書に係る修正申告書を青色の申告書により提出することができる。

所得税法 第143条

ここに雑所得は入っていません。
国税庁のタックスアンサー No.2070も「青色申告をすることができる方は、不動産所得、事業所得、山林所得のある方です」と書いています。
会社員の副業として、Web制作の収入を雑所得で申告している人は、青色申告にできません。

事業所得か雑所得かの分かれ目は、所得税基本通達35-2 の注記にあります。

(注) 事業所得と認められるかどうかは、その所得を得るための活動が、社会通念上事業と称するに至る程度で行っているかどうかで判定する。

所得税基本通達 35-2

同じ注記は続けて、取引を記録した帳簿書類の保存がない場合は、収入金額が300万円を超え、かつ事業所得と認められる事実がある場合を除いて、業務に係る雑所得にあたる、としています。
同じ通達の本文には、雑所得にあたる例として「デザインの報酬」も挙がっています(事業所得と認められるものを除く)。
Web制作を仕事として続けていて、帳簿をつけているかどうかが、事業所得として青色申告に進めるかの手前の分かれ目です。

青色申告の承認申請は、原則その年の3月15日まで

青色申告にするには、税務署の承認が要ります。
申請の期限は次のとおりです。

その年分以後の各年分の所得税につき前条の承認を受けようとする居住者は、その年三月十五日まで(その年一月十六日以後新たに同条に規定する業務を開始した場合には、その業務を開始した日から二月以内)に、当該業務に係る所得の種類その他財務省令で定める事項を記載した申請書を納税地の所轄税務署長に提出しなければならない。

所得税法 第144条

すでに事業をしている人が2026年分から青色にしたかったなら、期限は2026年3月15日でした(この年は日曜日だったので、実際は翌日の3月16日)。
今から出すと、2027年分からの青色申告になります(2027年3月15日が期限)。
一方、その年の1月16日以後に開業した人は、開業した日から2か月以内です。

2か月の数え方は、国税通則法第10条で決まっています。
初日(開業した日)は数えないので、期間は2か月後の、開業した日と同じ日付の日で終わります。
その日が土曜日・日曜日・祝日や12月29日〜31日なら、その翌日(休みが続けば休み明け)が期限です(国税通則法施行令第2条第2項)。
たとえば2026年9月1日に開業したなら、期間は11月1日で終わり、この日は日曜日なので、期限は11月2日になります。
日付の数え間違いを避けるなら、開業した月の翌月のうちに出しておくのが確実です。

申請書は、税務署に書面で出すほか、国税庁の手続の案内によると、e-Taxソフト(WEB版)の「マイページ」からも出せます。

年末までに通知が無ければ、承認されたものとみなされる

出したあとに返事が来ないこともあります。
それについては、こう定められています。

第百四十四条(青色申告の承認の申請)の申請書の提出があつた場合において、その年分以後の各年分の所得税につき第百四十三条(青色申告)の承認を受けようとする年の十二月三十一日(その年十一月一日以後新たに同条に規定する業務を開始した場合には、その年の翌年二月十五日)までにその申請につき承認又は却下の処分がなかつたときは、その日においてその承認があつたものとみなす。

所得税法 第147条

承認や却下をするときは書面で通知することになっていますが(第146条)、その年の12月31日までに何も来なければ、承認されたものとみなされます。
11月1日以後に開業した場合は、翌年2月15日までです。
帳簿の付け方が決まりに沿っていない場合などは、申請が却下されることがあります(第145条)。

開業届の期限は、2026年1月1日以後の開業から「確定申告期限まで」に変わった

開業届(個人事業の開業・廃業等届出書)は、青色申告の申請書とは別の書類です。
期限は、所得税法第229条に書かれています。
今の条文はこうです。

居住者又は非居住者は、国内において新たに不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき事業を開始し、又は当該事業に係る事務所、事業所その他これらに準ずるものを設け、若しくはこれらを移転し、若しくは廃止した場合には、財務省令で定めるところにより、その旨その他必要な事項を記載した届出書を、その事実があつた日の属する年分の所得税に係る確定申告期限までに、税務署長に提出しなければならない。

所得税法 第229条

2025年までの条文は、ここが「その事実があつた日から一月以内に」でした。
令和5年の改正(令和5年法律第3号)で変わり、改正法の附則で、2026年1月1日以後に開業した分から新しい期限が適用されることになっています。
それより前に開業した分は、元の「1か月以内」のままです。
国税庁の手続の案内も「事業の開始等の事実があった日の属する年分の確定申告期限までに提出してください」と書いています。
検索で出てくる「開業届は1か月以内」という説明は、改正前のものです。

開業届を出さなかった場合の罰則は、所得税法の罰則の編(第238条〜第243条)を確かめた範囲では、第229条を挙げたものは見当たりませんでした。
ただ、青色申告の申請の期限(開業から2か月以内)のほうが先に来るので、青色申告にするなら、開業届と一緒に早めに出すのが分かりやすいと思います。
開業届も e-Tax で出せます(同じ手続の案内)。

青色申告にすると、決まった形で帳簿をつける

承認を受けたら、帳簿をつけて保存する義務があります(所得税法第148条)。
帳簿の形は財務省令で決まっていて、原則は「正規の簿記の原則」に従って記録し、貸借対照表と損益計算書を作ることです(所得税法施行規則第57条)。
簡易な記録の方法も認められていて(同第56条)、タックスアンサー No.2070 は「現金出納帳、売掛帳、買掛帳、経費帳、固定資産台帳のような帳簿を備え付けて簡易な記帳をするだけでもよいことになっています」と書いています。

ただし、どちらでつけるかで、受けられる控除の額が変わります。

65万円の控除は、2026年分までと2027年分からで条件が変わる

青色申告特別控除は、租税特別措置法第25条の2で決まっています。
この条文が令和8年の改正(令和8年法律第12号)で書き換えられ、改正法の附則はこう定めています。

新租税特別措置法第二十五条の二の規定は、令和九年分以後の所得税について適用し、令和八年分以前の所得税については、なお従前の例による。

所得税法等の一部を改正する法律(令和8年法律第12号)附則 第33条

2026年分(2027年2〜3月に出す申告)までは今の条文、2027年分からは新しい条文です。
違いを並べると次のとおりです。

条件2026年分まで2027年分から
正規の簿記(複式簿記)+帳簿を電子で保存し、優良な電子帳簿の要件を満たす(届出書が要る)65万円75万円(期限内にe-Taxで出すことも必要)
正規の簿記+帳簿を電子で保存し、国税庁の基準に合うシステムで電子取引のデータを保存する「デジタルシームレス保存」(届出書が要る)(この区分は無い)75万円(期限内にe-Taxで出すことも必要)
正規の簿記+期限内にe-Taxで出す65万円65万円
正規の簿記+書面で期限内に出す55万円10万円まで
簡易な帳簿10万円10万円(前々年の事業所得(不動産の事業なら不動産所得)の総収入金額が1,000万円を超える人は受けられない)
租税特別措置法 第25条の2(2026年10月6日時点の条文と、2027年1月1日施行の改正後の条文)から作成。期限内の提出などほかの条件もある

2027年分からの条文では、65万円の控除(第4項)は「その年分の所得税の確定申告書の提出期限までに」e-Taxで送信した場合に限って適用されます(第7項)。
国税庁のリーフレットも、2027年分以降は書面で申告した場合の控除の上限が10万円になる、と案内しています。
同じリーフレットは、75万円は「65万円の控除の要件に加えて」優良な電子帳簿の保存かデジタルシームレス保存の要件を満たし、届出書を出す必要がある、としています。
また、簡易な帳簿の人については、別のリーフレットでこう説明しています。

10万円の青色申告特別控除の対象者から、その年において不動産所得又は事業所得を生ずべき事業を営む者で、これらの所得に係る取引を簡易な簿記の方法により記録しているもののうち、その年の前々年分の不動産所得又は事業所得に係る収入金額が1,000万円を超える者は10万円の青色申告特別控除が適用できなくなります。

国税庁 リーフレット「簡易簿記による10万円の青色申告特別控除を適用している皆様へ」

これから青色申告を始める人は、最初から複式簿記で帳簿をつけ、e-Taxで出す前提にしておくのが、2027年分以降の控除を考えると無難だと考えています。
なお、入金した日で売上を数える現金主義を選んだ人は、2026年分までは55万円・65万円、2027年分以降も65万円・75万円の控除は受けられず、受けられるのは10万円の控除です(租税特別措置法第25条の2、タックスアンサー No.2072、75万円のリーフレット。
現金主義の説明は年末に納品して、入金が翌年になった売上は、どちらの年に入れるのか)。

募集文で青色申告に触れた発注者はいなかった

青色申告や開業届は、仕事を受けるときに求められるものなのか。
自分が応募の段階で取り込んだ募集内容1,482件(発注者の原文の部分だけ。
2026年10月6日時点)で数えました。

募集の書き方件数
青色申告に触れたもの0件
開業届の提出を条件にしたもの1件
法人に限るとしたもの0件
インボイスの登録を条件にしたもの0件
副業OK・副業歓迎としたもの35件
取り込んだ募集内容1,482件(発注者の原文の部分。2026年10月6日時点)

開業届の提出を条件にした1件は、発注者が補助金を使うため、相手を法人か開業届を出した個人事業主に限る、という理由でした。
副業での応募は不可とした募集は、この1件を含めて6件でした(同じ文面の再掲を含む)。
「フリーランスまたは個人事業主として、Web制作を本業としている方」を条件にした募集もありました。
インボイスは、登録を条件にしたものは0件でしたが、登録の有無を尋ねた募集が3件、未登録でも相談できるとした募集が1件ありました。

数えたのは募集文だけで、契約の段階で何を確かめているかは分かりません。
ただ少なくとも、青色申告かどうかを募集の条件にした発注者はいませんでした。
青色申告は、仕事を取るためではなく、自分の税金を軽くするための手続きだと考えています。

青色申告で変わる、ほかの扱い

青色申告かどうかで扱いが変わるものは、ほかにもあります。
仕事用のパソコンを40万円未満まで全額その年の経費にできる特例は、青色申告の事業所得が条件です(Web制作に使うパソコンやソフトは、いくらまでなら買った年に全額経費にできるのか)。
家賃や電気代などの家事関連費の扱いも、政令の書き方が青色と白色で分かれています(自宅で仕事をするWeb制作者は、家賃や電気代をどこまで経費にできるのか)。

まとめ

  • 青色申告ができるのは、事業所得・不動産所得・山林所得のある人。副業の雑所得の人はできない(所得税法第143条)
  • 青色申告承認申請書は、その年の3月15日まで。1月16日以後に開業した年は、開業から2か月以内(第144条)
  • その年の12月31日(11月1日以後の開業は翌年2月15日)までに通知が無ければ、承認されたものとみなされる(第147条)
  • 開業届は、2026年1月1日以後の開業から、その年分の確定申告期限まで。それより前の開業は1か月以内だった(第229条・令和5年法律第3号附則)
  • 2026年分までは65万円・55万円・10万円。2027年分からは75万円・65万円・10万円で、65万円以上はe-Taxで出すことが条件。書面だと10万円まで(租税特別措置法第25条の2・令和8年法律第12号附則第33条)
  • 確認した募集1,482件で、青色申告に触れたものは0件。青色申告は、仕事を取るためより自分の税金のための手続きと考えている

青色申告にしたら、最初に決めておきたいのが自宅の家賃や電気代の分け方です。
自宅で仕事をするWeb制作者は、家賃や電気代をどこまで経費にできるのかにまとめています。

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この記事を書いた人

宮城県東松島市でひとりでWeb制作をやっています。Web業界10年、会社員時代に50を超えるプロジェクトを担当したのち独立。実際に使った道具と、迷って決めたことを書いています。

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